リビングストンデージー  

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Flora of Mikawa

ハマミズナ科 Aizoaceae  クレレツム属

別 名 ヘラマツバギク(箆松葉菊)、ベニハリソウ(紅玻璃草)、サボテンギク
中国名 彩虹菊 cai hong ju
英 名 Livingstone daisy , ice plant
学 名 Cleretum bellidiforme (Burm.f.) G.D.Rowley
 synonym Dorotheanthus bellidiformis (Burm.f.) N.E.Br.
 basionym Mesembryanthemum bellidiforme Burm. f.
リビングストンデージー の花
リビングストンデージー の花2
リビングストンデージー の花3
リビングストンデージー の花5
リビングストンデージー の雄しべ
リビングストンデージー の花後の咢片
リビングストンデージー の茎のパピラ
リビングストンデージー
リビングストンデージー の花4
リビングストンデージー葉
花 期 4~6月
高 さ 10~20㎝
生活型 1年草
生育場所 栽培種
分 布 外来種  南アフリカ原産
撮 影 浜松市  18.04.03
2012年に分子系統学による分類により、クレレツム属Cleretumにまとめられるようになったが、まだ、ドロテアンツス属Dorotheanthus に分類されていることも多い。原産地の南アフリカのPlantz Africaではクレレツム属Cleretumに分類し、GRINも同様である。日本には昭和の初期に導入され、よく栽培されている。園芸品種は花がやや大きく、直径5~6㎝のものが普通である。
 1年草、多肉質。高さ10~20㎝、低くグランドカバー状になり、枝を数本広げる。葉は長さ5㎝以下、幅2㎝以下、灰緑色~緑色又は栗色を帯び、舌形~スプーン形、多少、平ら、全縁。葉や茎に気泡のような表面細胞(パピア)=氷霜毛が目立ち、明るい太陽光に輝き、水を貯える。花柄は上向き又は傾き、細く、肉質、長さ25㎜以下、枝先につく。花は多数つき、単生、直径20~40(50)㎜、色は明るい。花弁は35~50個、線形~狭い槍形、平開し、色は様々、白色、クリーム色、黄色、サーモン色、オレンジ色、ピンク色、モーブ色、マゼンタ色、赤色、ときに白色、栗色、黄色、淡オレンジ色の地色に2色になる。雄しべは花の中心に2又は4列に束生し、花糸が栗色、葯が紫色又は黄色。子房は下位。果実は蒴果、広がった膜があり、湿ると外側に曲がる。蒴果は5辺があり、5区画からなり、熟すと、硬く、乾き、星形の咢片が宿存する。種子は不規則な形であり、淡褐クリーム色、表面は平滑。花期は晩春~夏(4~6月)。

クレレツム属

  family: Aizoaceae - genus Cleretum

 Cleretum属はイギリスの植物分類学者のN.E. Brownにより確立され、1925年のThe Gardener’s Chronicleの第78巻(シリーズ3)に、「Mesembryanthemum and some new genera separated from it」のタイトルで掲載されている。しかしながらその意味は不明瞭である。Cleretumはギリシャ語の語源に由来し、スパルタ時代に土地のくじ引きのために使われた。例えば、小石、陶器の破片、木片など。ラテン語の末尾の-etum は与えられた植物によって占められた場所を示す。種名のbellidiforme は ヨーロッパのデージー Bellis属の花に似ていることの解説であり、‘handsome’を意味する。通称名の bokbaaivygie はケープの西海岸のダーリングの近くにあるBokbaai (Buck Bay) 農場を記念して名付けられた。そこではこの種が普通に見られ、何世代にもわたり、Duckitt familyが所有している。オランダの植物学者の Nicolaas L. Burmann (1733~1793) は初め、1768年にアムステルダムで出版した彼の Prodromus florae capensis でこの種をMesembryanthemum bellidiforme として記述した。1928年に N.E. BrownはDorotheanthus属に置き、D. bellidiformis,とし、名がよく知られるようになった。しかし、1979年に英国の植物学者のGordon RowleyがCleretum属に移し、園芸分類雑誌の Baileya.の中で C. bellidiformeとした。20世紀の初期~中期に、いろいろな植物学者、主にLouisa Bolusがケープタウン大学でDorotheanthus属の多数の種を記述した。 D. acuminatus, D. bidouwensis, D. flos-solis, D. hallii, D. littlewoodii, D. lutens, D. muirii, D. oculatus var. oculatus, D. oculatus var. saldanensis 及び D. stayneri を含む。しかしながら、その後、1987年にドイツの植物学者の H.-D. Ihlenfeldt と M. Struck がsynonym のDorotheanthus 属の下に Cleretum 属を置いたとき、これらの全ての分類群はD. bellidiformis のsynonymとみなされた。2012年にはケープタウン大学の植物学者、Cornelia Klak とPeter Bruyns はDorotheantheae族の分子系統学(DNA解析に基づく進化的発生と多様化の調査)を発表し、Dorotheanthus はCleretum属の中に置くのがベストであることを示した。この結果、D. bellidiformisは再び、Cleretum bellidiformeとなった。いくつかの他の分類(上)の変更があり、Namaqualand からの紫色又は白色花のDorotheanthus bellidiformis subsp. hestermalensisは Cleretum hestermalenseに名前を変更された。Cleretum属は多肉の1年草の14種からなり、南アフリカの西部、南西部、南部の冬季降雨部に固有である。その分布はNamaqualand からケープ南部及び、グレートカルー西部~南部の内陸である。その主な2つの中心はNamaqualand の南中央のKamiesbergの中と、ケープ西部の南西部の海岸である。Cleretum属はまた、Aethephyllum属を含み、Dorotheantheae族の唯一のメンバーである。14種のCleretum属のうち、8種は大きな華やかな花をもち、一方6種は小さな大したことがない花をもつ。C. bellidiformeは最も普通の種であり、最も魅力的なものの1つである。園芸取引ではまだ、しばしばMesembryanthemumと呼ばれる。(参考1)
【クレレツム属の種】
01 Cleretum apetalum (L.f.) N.E.Br. = Dorotheanthus apetalus(Dorotheanthus gramineus (Haw.) Schwantes)
02 Cleretum bellidiforme (Burm.f.) G.D.Rowley = Dorotheanthus bellidiformis(Burm.f.) N.E.Br.
03 Cleretum booysenii (L.Bolus) Klak = Dorotheanthus booysenii L.Bolus
04 Cleretum bruynsii Klak
05 Cleretum clavatum (Haw.) Klak = Dorotheanthus clavatus (Haw.) Struck
06 Cleretum herrei (Schwantes) Ihlenf. & Struck
07 Cleretum hestermalense (Ihlenf. & Struck) Klak
08 Cleretum lyratifolium Ihlenf. & Struck
09 Cleretum maughanii (N.E.Br.) Klak = Dorotheanthus maughanii (N.E.Br.) Ihlenf. & Struck
10 Cleretum papulosum (L.f.) L.Bolus subsp. papulosum
11 Cleretum papulosum (L.f.) L.Bolus subsp. schlechteri (Schwantes) Ihlenf. & Struck
12 Cleretum patersonjonesii Klak
13 Cleretum pinnatifidum (L.f.) L.Bolus  = Aethephyllum pinnatifidum (L.f.) N.E.Br.
14 Cleretum rourkei (L.Bolus) Klak = Dorotheanthus rourkei L.Bolus

【狭義のクレレツム属 Cleretum】
 多肉質、1年草、目立つ乳頭状の表皮細胞をもつ。茎は傾伏~斜上、節間は長い。葉は対生、± へら形、全縁(オーストラリアの植物)。花は単生、頂生又は腋生、花柄がある。咢片5個、統合された筒部があり、不等長で2個は小さく、縁が膜質。花弁状の仮雄しべが多数、黄色又は白色、平らになる。雄しべは5~10個。花糸は扁平、仮雄しべより短い。花柱は5個。子房は下位、5室。胚珠は多数、側膜。果実は5室の蒴果、湿ると開き、バルブに翼がある。種子は多数、三角形~四角形。
 3種が南アフリカ原産。1種がオーストラリアに帰化。
【狭義のクレレツム属 の種】
01 Cleretum herrei (Schwantes) Ihlenf. & Struck
02 Cleretum lyratifolium Ihlenf. & Struck
03 Cleretum papulosum (L.f.) N.E.Br.

Cleretum apetalus = Dorotheanthus apetalus(Dorotheanthus gramineus (Haw.) Schwantes)
Cleretum bellidiforme = Dorotheanthus bellidiformis
Cleretum cuneifolium = Dorotheanthus bellidiformis ssp. bellidiformis
Cleretum criniflorum = Dorotheanthus bellidiformis ssp. bellidiformis
Cleretum flos-solis = Dorotheanthus bellidiformis ssp. bellidiformis
Cleretum gramineum = Dorotheanthus apetalus

ドロテアンツス属

  family: Aizoaceae - genus Dorotheanthus

 1年草、乳頭状突起がある。傾伏~斜上、まれに小型、花時に高さ±10㎝以下。葉はほとんどが互生、初め、2輪の十字対生、へら形~長楕円状卵形~線形、平らになり、下部ではロゼット状、丈夫ではやや間隔が開き、基部の合着はわずか又は無、柔らかく、基部は葉柄状に狭くなる。花は単生、頂生又は腋生、直径40㎜以下。苞はなく、花柄は長さ60㎜以下。朝に開花し、夜閉じる。咢片は5個、変化が多く、ときに、葉状、柔らかく、パピラ(乳頭状突起)がある。花弁は2列、分離、線状披針形又はD. apetalusでは目だたない。多くの色があり、白色、黄色、橙色~赤色の様々な色合い、ピンク色、紫色、普通、基部が淡色になり、結果としてハロー効果で中心が大抵は暗色になる。雄しべは褐色又は帯赤色、ときに基部に毛がある。仮雄しべは無い。蜜腺は小鈍鋸歯状(crenulate)の輪になる。子房はやや平ら、肋やいぼは無く、側膜胎座。柱頭は5個、錐形、内側にパピラがある。果実は5室、蒴果、Mitrophyllum型、柱頭が宿存する。シートが拡大し、大きく、竜骨が広がり、分岐する。バルブの翼は狭く、鋭形。覆う膜は有るか又は無い。種子はナシ形~球形、平滑で、帯白色又はいぼ状、暗褐色。X=9。花期は生息地では晩冬~春。特徴、1年草、輝く嚢細胞、自形変晶(idioblasts)をもつ。花は多色。果実はしばしば宿存する柱頭をもつ。
 7種が南アフリカのwinter-rainfall regionだけに分布する。ケープ西部と北部の.海岸と内陸部に普通にみられる。(参考3)
【ドロテアンツス属の種】
Dorotheanthus apetalus (L.f.) N.E.Br.
Dorotheanthus bellidiformis (Burm.f.) N.E.Br.
Dorotheanthus booysenii L.Bolus
Dorotheanthus clavatus (Haw.) Struck
Dorotheanthus maughanii (N.E.Br.) Ihlenf. & Struck
Dorotheanthus rourkei L.Bolus
Dorotheanthus ulularis Brusse

クレレツム属 の主な種と園芸品種

1 Cleretum bellidiforme (Burm.f.) G.D.Rowley リビングストンデージー
  synonym Dorotheanthus bellidiformis (Burm.f.) N.E.Br.
  synonym Mesembryanthemum bellidiforme Burm. f. [basynonym]
 南アフリカ原産。英名はLivingstone daisy , ice plant , Cape daisy。中国名は彩虹菊 cai hong ju。和名はヘラマツバギク(箆松葉菊)又はベニハリソウ(紅玻璃草)といわれるがほとんど使われていない。
 1年草、多肉質。高さ10~20㎝、低くグランドカバー状になり、枝を数本広げる。葉は長さ5㎝以下、幅2㎝以下、灰緑色~緑色又は栗色を帯び、舌形~スプーン形、多少、平ら、全縁。葉や茎に気泡のような表面細胞(パピラ)=氷霜毛が目立ち、明るい太陽光に輝き、水を貯える。花柄は上向き又は傾き、細く、肉質、長さ25㎜以下、枝先につく。花は多数つき、単生、直径20~40(50)㎜、色は明るい。花弁は35~50個、線形~狭い槍形、平開し、色は様々、白色、クリーム色、黄色、サーモン色、オレンジ色、ピンク色、モーブ色、マゼンタ色、赤色、ときに白色、栗色、黄色、淡オレンジ色の地色に2色になる。雄しべは花の中心に2又は4列に束生し、花糸が栗色、葯が紫色又は黄色。子房は下位。果実は蒴果、広がった膜があり、湿ると外側に曲がる。蒴果は5辺があり、5区画からなり、熟すと、硬く、乾き、星形の咢片が宿存する。種子は不規則な形であり、淡褐クリーム色、表面は平滑。花期は晩春~夏(4~6月)。
品種) Magic Carpet Series , 'Mezoo Trailing Red'

参考

1) Plantz Africa
 Cleretum bellidiforme  
http://pza.sanbi.org/cleretum-bellidiforme
2) VicFlora Flora of Victoria
 Genus Cleretum  
https://vicflora.rbg.vic.gov.au/flora/taxon/4c7a4022-f9d2-418f-8fc4-0df0aff828c5
3) Seed Plants of southern Africa: families and genera
 Dorotheanthus Schwantes  
http://posa.sanbi.org/flora/results_browse.php?src=SP&taxon=genno=178,spno=21