クサアジサイ 草紫陽花

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Flora of Mikawa

アジサイ科 Hydrangeaceae アジサイ属

学 名 Hydrangea alternifolia Siebold

 synonym Cardiandra alternifolia Sieb. et Zucc.

クサアジサイの花序
クサアジサイの花
クサアジサイの両性花
クサアジサイ
クサアジサイ葉
花 期 7~9月
高 さ 20~70㎝
生活型 多年草
生育場所 やや湿った林内
分 布 在来種(日本固有種) 本州(関東地方以西)、四国、九州
撮 影 設楽町  07.9.8
和名の由来はアジサイのような花が咲く草本であることから。アジサイの花が終わった夏の薄暗い林内で咲く。クサアジサイ属ともされるがアジサイ属に分類されるようになった。
 多年草。木質の地下茎があり、茎は直立し、通常、分枝せずに高さ20~80㎝になり、全体に白色の粗い毛が散生する。茎の下部には数個の鱗片状に退化した葉がある。葉は互生し、葉身は草質で、披針形~楕円形まれに卵形、長さ10~20㎝×幅3~6㎝、基部は楔形、縁には鋭鋸歯があり、歯先は多少点状、先はやや尾状の尖鋭形、両面に長さ0.7mmの白色の短毛が散生する。枝先の集散花序に白色または淡紅色の花を多数つける。花序軸には白色の粗い毛がある。苞は宿存性、狭楕円形~狭披針形、長さ2㎝まで。装飾花は花序の周辺に少数つき、卵形で幅7~18㎜、白色または淡紅紫色の花弁状の広卵形~菱形の萼片3個からなる。両性花は直径5~7㎜、小花柄は長さ3~6㎜、無毛または白色の毛が散生する。萼筒と子房が合着した花托筒は長さ1.5~2㎜、外側に粗い毛が散生する。萼片は5個、花期に平開し、広卵形~三角状卵形、長さ0.5~0.6㎜×幅4~5㎜、先は円形。花弁は花托筒の上縁に5個つき、花時に平開し、倒卵形または広倒卵形、長さ2.5~3m㎜×幅2~2.5mm、先は円形。雄しべ約20本、花糸は長さ2~3㎜、葯は黄色。花柱は直立し、長さ0.5~0.8㎜、果時に宿存し、長さ1~1.5㎜に伸び、外曲する。蒴果は長さ3~4㎜。種子は楕円形で長さ約1㎜。花期は7~10月上旬。

クサアジサイ属

  family Hydrangeaceae - genus Cardiandra

 亜低木又は低木、根茎がある、茎は単純。葉は互生又は4~8束生し、無托葉(exstipulate)。葉身は単葉。花序はしばしば頂生、密錘花序又は散房花序状の集散花序。雄花は少数、大きい。咢片は2~3個、分離又はときに基部でわずかに合着し、花弁状。雌花は多数、小さい。萼筒は子房につき、花托筒を作る。萼歯は小さく、蕾では敷石状。花弁は(4~)5個、蕾中では覆瓦状。雄しべは非常に多く、多列につく。花糸は糸状。葯は倒心形、2室、縦に裂開し、先は切形、葯隔は広倒三角形。子房は半下位、不完全な2~3室をもつ。花柱は2~4本。柱頭は小さく、類頭状。果実は蒴果、類下位、先が裂開し、先に宿存する萼歯と花柱をもつ。種子は多数、小さく、扁平、両端に翼がある。種皮は網目状、胚は小さく、肉質の胚乳に取り囲まれる。
 世界に約4種あり、主に東アジアの亜熱帯に分布する。

 クサアジサ属はアジサイ属に含められ、クサアジサ属は異分類とされている。Flora Of China 、The Plant List以外はアジサイ属に含めている。

元クサアジサイ属の主な種と園芸品種

1 Hydrangea alternifolia Siebold クサアジサイ
  synonym Cardiandra alternifolia (Siebold) Siebold & Zucc.
品種) 'Pink Geisha'
 以下の変種、品種に分けられていたが、現在では基本種のsynonymとされている。

1-1 Cardiandra alternifolia (Siebold) Siebold et Zucc. var. hakonensis Ohba ex H.Ohba ハコネクサアジサイ

  synonym Hydrangea alternifolia Siebold var. hakonensis (Ohba ex H.Ohba) Hasseg. et Katsuy.

      ⇒アジサイ属

1-2 Cardiandra alternifolia Siebold et Zucc. f. mirabilis (Takeda) Sugim. ex H.Ohba オオバナノクサガク 

1-3 Cardiandra alternifolia Siebold et Zucc. f. oppositifolia (Honda) F.Maek. ミヤマクサアジサイ 異分類

1-4 Cardiandra alternifolia Siebold et Zucc. f. multiplex Hayashi  ヨウラククサアジサイ 異分類

1-5 Cardiandra alternifolia Siebold et Zucc. f. formosa Honda  ハナクサアジサイ 異分類


2 Hydrangea amamiohsimensis (Koidz.) Y.De Smet et Granados アマミクサアジサイ

  synonym Cardiandra amamiohsimensis Koidz.
  日本固有種(奄美大島)。英名はAmami-Oshima Herbal Hydrangea 。渓流沿いの岩場や湿った崖に生える。
 多年草。高さ30~60㎝。葉は互生し、長円状披針形、長さ10~18㎝。 円錐花序は頂生し、多数の花をつけ、花序軸および枝は白色、短毛があり、装飾花がなく、両性花のみ。 花は直径3~5㎜。花托筒(萼筒)は楕円形~ほぼ球形、萼歯は5個小さい。花弁は5個、広卵形~円形、中央が椀状に凹み、淡紅色又は白色、長さ約3㎜早落性。雄性先熟。雄しべは約15~19本、葯が紫色、花糸は白色。花柱は(2~)3本、やや反曲する。花期は9~10月。

3 Hydrangea densifolia (C.F.Wei) Y.De Smet et Granados シマクサアジサイ 島草紫陽花

  synonym Cardiandra formosana Hayata
 中国(浙江省)、台湾原産。中国名は台湾草绣球 tai wan cao xiu qiu。別名はタイワンクサアジサイ。中標高の山林下の湿った場所に生える。
 亜低木、高さ50~70 cm。 茎は最初はまばらに毛があるが、後に無毛になる。葉はしばしば茎の上部に4~7枚集まり、薄い紙質、狭楕円形~楕円形または長円状卵形で、長さ10~15 cm×幅3~6 cm、先は尖鋭形、先端は短い尾状になり、基部は漸尖し、葉柄の両側に沿って下に狭いくさび形に伸び、縁に小さな三角形の鋸歯があり、両面にまばらに毛があり、後にほぼ無毛になり、側脈は7~11対あり、細長く、アーチ形になり 、両面が平ら、細脈は網状で両面で明瞭。葉柄は長さ2~5cm。散房花序状の集散花序は通常頂生し、全体の小花柄が長くなり、毛が密につく。不稔の花は細い小花柄を持つ。萼片は2個、卵形、大きさは不等、大きいものは長さ1.5~2.5cm、その他は小さいもののほぼ2倍、先は尖鋭形または鈍形、基部は切形またはわずかに心形で、脈がある。稔性の花は小さく、柄が短い。萼筒は杯形、長さ約1㎜。萼歯は楕円形で長さ約0.7mm、先はわずかに尖る。花弁は5または4枚、楕円形または広長円形、長さ約3㎜×幅2~2.5㎜、先は鈍形、基部はほぼ切形。雄しべは15~19本、長さはわずかに不均等で、花弁とほぼ同長、複数の渦巻き状に配置される。子房はほぼ下位、花柱は2~3本、平坦、果時に長さ1~1.3㎜。蒴果は卵形、花柱を含めず長さ約3㎜×幅約2.5㎜。種子は褐色、広長円形、広卵形または広倒卵形で、翼の長さは0.7~1㎜、両端の翼は長さ0.2~0.25㎜、黄白色、半透明、種子の色とは明らかに色が異なる。花期は8月。果期は10月。
品種) 'Crug's Abundant' , 'Fenghuangshan' , 'Hsitou' , 'Hsitou Splendour'

4 Hydrangea marunoi Tagane & S. Fujii キモツキクサアジサイ 肝属草紫陽花

 日本固有種。鹿児島県大隅半島肝属山地に分布。川沿いの半日陰の湿った岩場に生える。2022報告の新種。
 形態学的には、辺縁の花に 3 花弁状の萼片がある点でクサアジサイ(H. alternifolia)と似るが、雄しべの数が多く(28~32本)、長い花柱(果時に1.2~1.8㎜)と長い種子(1.2~1.5㎜)により区別される。MIG-seqによる多重ISSR遺伝子型解析により、この新種は単系統であり、クサアジサイではなくアマミクサアジサイ(H. amamiohsimensis) およびオオクサアジサイ(H. moellendorffii)に近縁であることが示された。
 多年草、高さ31~103㎝、根茎がある。茎は生体では緑色、乾燥すると灰褐色、基部付近の直径は3.5~6㎜、若いうちは微軟毛があり、その後無毛になる。葉は互生し、茎ごとに7~11枚つき、葉柄がある。葉身は卵形、卵状楕円形、楕円状長円形、倒卵状楕円形、長さ(6.5~)10~28.4㎝×幅(2.5~)3.3~10.5㎝、紙質、両面にまばらに毛があるかほぼ無毛、上面は灰緑色、下面は薄淡緑色、先は尖鋭形、尖端は長さ2.5㎝まで、基部は楔形、沿下し、縁には鋸歯があり、中肋は上面にわずかに突出し、下面に突出し、二次脈は8~13対、下面に突出し、三次脈ははしご状網状脈(scalariform-reticulate)で、下面で明瞭。葉柄は長さ1~5㎝、無毛。花序は頂生またはたまに頂生および腋生、茎上部に散房状集散花序がつき、直径6~18㎝。苞と小苞は葉状、または狭披針形~線形で宿存性。不稔の花(機能的に雄花)は萼片が3個、稀に2または4個、白色、まれに浅くピンク色を帯びる、卵形、広卵形、ほぼ円形、長さ0.4~1.4㎝×幅0.4~1.4㎝、先は鈍形~円形。稔性の花は両性、花序柄がある。小花柄は長さ0.3~1.3㎝、毛がある。萼筒は杯形、長さ1.2~1.8㎜、微軟毛がある。萼歯は広三角状卵形、長さ0.8~1.2㎜、微軟毛があり、先は円形、縁には繊毛がある。花弁は白色、まれに薄くピンク色を帯び、卵形~広円形~ほぼ円形、長さ3.7~4.5mm。 雄しべは28~32本、長さ2.8~5.2㎜、葯は長さ0.6~0.8㎜、花糸は長さ2.2~4.4㎜、白色、無毛、扁平。子房は萼筒と融合し、3室、1室あたり22~31個の胚珠を持つ。花柱は3本、花時に長さ0.9~1.1㎜、果時には長さ1.2~1.8㎜に伸びる。蒴果は楕円形~ほぼ球形、長さ2.5~3.8㎜、直径2.2~3.5㎜。種子は褐色、長さ1.1~1.5㎜(翼を含む)、翼は半透明で種子の体色より明るい。

5 Hydrangea moellendorffii Hance オオクサアジサイ

  synonym Cardiandra moellendorffii (Hance) Migo [Flora of China]

 日本(沖縄)、中国( 安徽省、福建省、広東省、広西チワン族自治区、貴州省、湖北省、湖南省、江西省、浙江省)原産。中国名は草绣球 cao xiu qiu cao xiu qiu。標高700~1500mの谷や山の斜面に密集した森林~疎林に生える。
 亜低木、高さ0.3~1m。茎は乾くと帯褐色、わずかに条線がある。葉はまばらに茎に互生し、葉柄は無又は有、葉柄は長さ1~3(~7)㎝。葉身は楕円形~倒卵状長円形、長さ6~22㎝×幅3~10㎝、紙質、下面にまばらに軟毛があるか、ほぼ無毛、上面はまばらに小剛毛があり、二次脈は7~9対、下面にわずかに明瞭、基部は楔形~狭楔形、縁は粗い歯状鋸歯状、先は尖鋭形~短い腺鋭形。花序は頂生、散房花序状の集散花序。苞と小苞は狭披針形~線形、宿存性。雄花は萼片が2~3個、白色又は帯ピンク色、広卵形~類円形、長さ0.5~1.5㎝、基部は類切形。雌花は萼筒が円蓋形、長さ1.5~2㎜。萼歯は広卵形、先は円形~鈍形。花弁は帯ピンク色又は白色、広楕円形~類円形、長さ2.5~3㎜。雄しべは15~25本、わずかに花弁より短い。花柱は3本、果時に長さ約1㎜。蒴果はほぼ球形、長さ3~3.5㎜×幅2.5~3㎜。種子は褐色、長円形~楕円形、長さ1~1.4㎜、翼は不透明又は半透明、種子体の色より暗いか薄い。花期は7~8月。果期は9~10月。

参考

1) Flora of China
 Cardiandra  
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=105616
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Hydrangea Gronov. ex L.  
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30010546-2
3) GBIF
 Hydrangea alternifolia Siebold  
https://www.gbif.org/species/3645224
4) 神奈川県立 生命の星・地球博物館
 神奈川県のクサアジサイ 大場達之
https://nh.kanagawa-museum.jp/www/pdf/nhr7_077_084ohba.pdf
5) PhytoKeys 211: 33–44 (2022)
Hydrangea marunoi (Hydrangeaceae), a new species from Osumi Peninsula, southern Japan
https://phytokeys.pensoft.net/article/89452/