コセリバオウレン 小芹葉黄連

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Flora of Mikawa

キンポウゲ科 Ranunculaceae オウレン属

学 名 Coptis japonica (Thunb.) Makino var. japonica
Coptis japonica (Thunb.) Makino var. major (Miq.) Satake, excl. typo
コセリバオウレンの雄花
コセリバオウレンの両性花
コセリバオウレンの雌花序
コセリバオウレンの雌花
コセリバオウレン
コセリバオウレン葉
果 期 2~3月
高 さ 15~40㎝
生活型 多年草
生育場所 山地の林内
分 布 在来種(日本固有種) 本州(太平洋岸)
撮 影 鳳来町 愛知県民の森 04.2.2.19
コセリバオウレン、セリバオウレン、キクバオウレンをまとめて広義にオウレン Coptis japonica という。コセリバオウレンは大きな葉が3回3出複葉である。
 根茎は黄色、薬用とされるが、キクバオウレンの根茎より細い。全体に無毛。葉は3(~4)回3出複葉、薄く、鋭鋸歯縁。花は白色、横向きにつく。雌雄異株まれに雌雄同株。大きな5個の花弁に見えるのは萼片、内側に小さな8~10個の花弁がある。雄しべは多数。写真は左側が雄株、右側が雌株(両性花)。雌株は両性花又は雄しべのない雌花。袋果は5~10個輪生し、長さ10~15㎜、果実とほぼ同長の果柄がある。2n=18
 セリバオウレン var. major は本州、四国に分布し、葉が2回3出複葉。葉以外に差はなく、区別は困難という見解もある。ウスギオウレンとは葉が同じである。
 キクバオウレン var. anemonifolia は北海道(南部)、本州の日本海側に分布し、葉が1回3出複葉
 ウスギオウレンは東京都、神奈川県、山梨県、静岡県、長野県、新潟県に分布する。萼片が淡黄色、花弁の黄色がやや強く、葉はコセリバオウレンと同じ、3(~4)回3出複葉。
 トウオウレン(シナオウレン)Coptis chinensisは中国に分布し、中国名は黄连( huang lian)という。 根が漢方薬。

オウレン属

  family Ranunculaceae - genus Coptis

 多年草、根茎があり、ときに匍匐茎がある。根茎は分枝する。葉は数個根生し、長い葉柄があり、3又は5分裂する。花茎は1~数本、直立する。花序は頂生し、単出集散花序、花が1~少数つく。花は小さく、放射相称、両性。咢片は5(~8)個、白色又は緑黄色、しばしば花弁状。花弁は5~10個、又はそれ以上、爪部があり、内側にしばしば蜜腺がある。雄しべは多数、無毛。花糸は糸状。葯は広楕円形。雌しべは8~14本、柄がある。胚珠は子房に数個。花柱は反曲する。袋果は柄があり、長円形、不明瞭な横脈がある。花柱は宿存し、短い。種子は可食、楕円形、光沢があり、ほぼ平滑。
 世界に15種があり、東アジア、北アメリカに分布する。

オウレン属の主な種

1 Coptis chinensis Franch.  トウオウレン
 中国原産。中国名は黄连 huang lian 。英名はChinese goldthread 。別名はシナオウレン

2 Coptis japonica (Thunb.) Makino  オウレン 黄連 [広義]
 日本固有種(北海道、本州、四国)。英名はJapanese goldthread 。山地の針葉樹林下に生える。日本特産の薬用植物であり、江戸時代から栽培化され、中国に輸出され、現在も輸出されている。
 小型の多年草。根茎を薬用として利用するのは4~5年生のもの。根茎は灰黄褐色、多少湾曲した円柱形、数珠状の結節があり、しばしば分枝し、普通、長さ2~4㎝×直径0.2~0.7㎝。
 葉は質が厚く、光沢があり、1~4回3出複葉。雌雄異株まれに雌雄同株。花茎は高さ約10㎝、花が2~3個つく。花は白色。咢片は5~7個、花弁状。花弁は咢片より短く、細い爪部があり、細いさじ形。袋果は矢車のように広がり、先には穴が開き、揺れると穴から種子が落ちる。花期は2~4月。

2-1 Coptis japonica (Thunb.) Makino var. japonica  コセリバオウレン 小芹葉黄連
  synonym Coptis japonica (Thunb.) Makino var. major (Miq.) Satake, excl. typo
 日本固有種(本州の太平洋岸)
 多年草。高さ15~40㎝。根茎は黄色、薬用とされるが、キクバオウレンの根茎より細い。全体に無毛。葉は3(~4)回3出複葉、薄く、鋭鋸歯縁。花は白色、横向きにつく。雌雄異株まれに雌雄同株。大きな5個の花弁に見えるのは萼片、内側に小さな8~10個の花弁がある。雄しべは多数。写真は左側が雄株、右側が雌株(両性花)。雌株は両性花又は雄しべのない雌花。袋果は5~10個輪生し、長さ10~15㎜、果実とほぼ同長の果柄がある。2n=18。花期は2~3月。
2-2 Coptis japonica (Thunb.) Makino var. anemonifolia (Siebold et Zucc.) H.Ohba  キクバオウレン
  synonym Coptis japonica (Thunb.) Makino var. japonica auct. non Makino 
 北海道(南部)、本州の日本海側に分布する。
 葉が1回3出複葉
2-2-1 Coptis japonica (Thunb.) Makino var. anemonifolia (Siebold et Zucc.) H.Ohba f. viridiflora Honda ex Kadota  ミドリオウレン
2-3 Coptis japonica (Thunb.) Makino var. major (Miq.) Satake  セリバオウレン
  synonym Coptis japonica (Thunb.) Makino var. dissecta (Yatabe) Nakai ex Satake 
 本州、四国に分布する。最も栽培が多い。
 葉が2回3出複葉。葉以外に差はなく、区別は困難という見解もある。

3 Coptis kitayamensis Kadota  キタヤマオウレン 北山黄連
 日本固有種(岐阜県~京都府)暖温帯から亜寒帯の林下に生える。
 キタヤマオウレンはストロンをもつことで明らかにバイカオウレンに近縁である。
 多年草。地中を横走するストロンがある。花茎は太く、緑色あるいは紫褐色~暗赤紫色。葉は3小葉、ときに2深裂し掌状五小葉となる。小葉は倒卵形~倒卵状菱形、基部はくさび形、小葉柄は不明瞭。側小葉は上半部で3裂するか粗い鋸歯状又は中部で2浅裂~深裂する。葉の鋸歯は多数でやや細かく、小葉の全体に分布する。花茎は太く、暗紫褐色。花は大きく、直径(16~)18~24㎜。萼片は倒卵状楕円形、長さ(8~)9~12㎜×幅(2~)4.5~5.5㎜、細長く、爪部(柄)が明瞭。花弁の舷部は柄杓状になり(平坦な皿状ではない)。葯は白色あるいは稀に淡い赤紫色を帯びる。袋果の側面に1 脈がある。

4 Coptis lutescens Tamura  ウスギオウレン 薄黄黄蓮
 日本固有種(東京都、神奈川県、山梨県、静岡県、長野県、新潟県)。針葉樹林に生える。
 多年草。高さ10~20㎝。葉は根生し、葉はコセリバオウレンと同じ、(1~2)3(~4)回3出複葉。小葉は卵形、羽状に中裂し、裂片の縁に不揃いの鋭鋸歯又は欠刻状鋸歯がある。苞は先が細く糸状に3裂する。花茎は高さ10~20㎝、頂部で分枝し、花を数個つける。花は直径1~1.2㎝、淡黄色~白色、ときに淡紫色を帯びる。萼片は花弁より長く、波打つ。花期は4~5月

5 Coptis minamitaniana Kadota  ヒュウガオウレン 日向黄連
 日本固有種(四国の高知県中央部、九州)。
 .根茎は太くかっ短くあるいはやや長く、ストロンを出さない。 葉は洋紙質。花は単生する。咢は倒卵形、先端は尾状に短く尖る。花弁の舷部は皿状、質が薄く肉質とはならない.。

6 Coptis morii Hayata  ミンゲツオウレン
  synonym Coptis quinquefolia auct. non Miq
 台湾ン(台湾北部)原産。
 .根茎は太くかつ短く、あるいはやや長く、ストロンを出さない。葉は革質。頂小葉は卵形~菱形、粗い鋸歯がある。花は花茎に1-4個つく。苞は狭卵形、先端は漸尖形、しばしば3裂する。花弁の舷部は皿状で浅く、肉質となる。

7 Coptis quinquefolia Miq.  バイカオウレン 梅花黄蓮
 日本(本州の福島県以南、四国)、台湾原産。中国名は五叶黄连 wu ye huang lian。英名はfive-leaved goldthread。別名はゴカヨウオウレン(五加葉黄蓮)。暖温帯から亜寒帯の林下に生える
 .根茎は細く、かつ長く、地中を横走するストロンを出す。花茎は緑色あるいは紫褐色、花は花茎に単生する。花弁の舷部は肉質。

7-1 Coptis quinquefolia Miq. var. quinquefolia
 多年草、常緑。根茎は細長く、横に這う。地下に匍匐枝を出す。葉は根出し、葉柄は長さ2~13㎝、掌状複葉。小葉は5個、倒卵形、長さ2~5㎝×幅2~6㎝、類革質、下面は無毛、上面は脈にまばらに微軟毛があり、基部は心形、小葉柄は不明瞭又は明瞭。側小葉は中小葉に似るか又は斜めの卵形、不等に2裂する。中小葉は小葉柄が無又はほぼ無、くさび状菱形、長さ1.8~3.5㎝、3裂い、縁は鋭鋸歯、多数でやや細かく小葉の全体に分布し、先は鋭形。花茎は1~3本、高さ4~15[~28:Flora of China]㎝、無毛、帯褐色、花を上向きに1個、頂生する[花を約4個つける:Flora of China]。花は直径12~18㎜。苞は披針形、鋭鋸歯縁、先は鋭形。咢片は5個、楕円形~倒卵状楕円形、長さ4.5~8㎜×幅2.8~5㎜、無毛。花弁は舷部(petal blades) が皿状、スプーン形(spoon-shaped)~ひしゃく形( ladle-shaped)。、長さ1.6~3㎜、無毛、黄色。雄しべは長さ約4㎜。雌しべは10~12個。花柱は直立あるいは緩やかに反曲する.。袋果は長さ6~9㎜[4~5㎜:Flora of China]、側面に1 脈があり、柄は長さ5~6㎜[袋果とほぼ同長:Flora of China]。種子は長さ約1.5㎜。花期は3~5月。果期は4~5月。
7-2 Coptis quinquefolia Miq. var. shikokumontana Kadota  シコクバイカオウレン
 四国中央部の山地に分布。
  小葉柄は常に明瞭。花弁の舷部はコップ形(cup-shaped)。小葉は弱く、3裂し、裂片はしばしば不明瞭。花柱は強く反曲する。

7-2-1 Coptis quinquefolia Miq. var. shikokumontana Kadota f. plenisepala Akasawa  ヤエノバイカオウレン

8 Coptis ramosa (Makino) Tamura  オオゴカヨウオウレン
  synonym Coptis quinquefolia Miq. var. ramosa (Makino) Ohwi 
  synonym Coptis quinquefolia Miq. var. pedatoquinquefolia Koidz.
 日本固有種(屋久島)
 多年草。高さ5~13㎝。根茎は太く、短く、あるいはやや長く、やや直立し、ストロンは出さない。葉は掌状複葉、小葉は5または3個、やや厚く革質、光沢があり、菱形~倒卵形~卵形、縁に鋭鋸歯がある。花茎は褐色を帯び、しばしば分枝し、花が1~4個つく。苞は狭卵形、全縁、先は漸尖形。花は直径8~10㎜。萼片は花弁状、普通、5個つき、白色、中央に筋があり、長卵状楕円形、長さ6~8㎜。花弁は長さ6~8㎜、舷部が小さな黄色い半球形の深い椀形、質が薄く肉質とならない。花柱は長さ1㎜以下、鉤状に曲がる。袋果は舟形、長さ6~12㎜。花期は2~3月。

9 Coptis trifolia (L.) Salisb.  ミツバオウレン 三葉黄蓮
 日本(北海道、本州中部以北)、ユーラシア東部、北アメリカ、グリーンランド原産。英名はAmerican goldthread , canker-root , goldthread , threeleaf goldthread 。亜寒帯~寒帯の常緑針葉樹林林下や湿原などに生える。
 多年草。高さ 3~17㎝ 。根茎は黄色~橙色。葉は根生し、3出複葉。小葉はほぼ無柄、鋭い鋸歯縁、厚く光沢がある。細い長さ(3)5~10(17)㎝の花茎の先に直径約1㎝の花を1個だけつける。萼片は5個、長さ(1)1.7~4.5(11)㎜、幅1~4㎜、白色の花弁状で大きい。花弁は長さ0.8~1.6㎜、棍棒状の黄色の蜜腺だけになっている。雄しべは長く、30~60個。袋果は3~7個、放射状に開出し、長さ(3)3.9~7(8)㎜、果実とほぼ同長の柄があり、側面には脈がない。種子は長さ1~1.5㎜。2n=18。花期は6~8月。
9-1 Coptis trifolia (L.) Salisb. f. plena K.Imai  タマザキミツバオウレン
9-2 Coptis trifolia (L.) Salisb. f. semiplena (Miyabe et Tatew.) Okuyama  ヤエザキミツバオウレン

10 Coptis trifoliolata (Makino) Makino  ミツバノバイカオウレン 三葉の梅花黄蓮
  synonym Coptis oligodonta Satake コシジオウレン 越路黄蓮
 日本固有種(本州の中部地方~東北地方の日本海側)。亜高山帯から高山帯の水湿地に生える。
 多年草。ストロンを出さない。葉は3出複葉、葉の鋸歯は少数で粗く、小葉の上半部にある。花茎は高さ7~15㎝、太く、暗紫褐色、普通、花を上向きに単生する。花は直径12~15㎜。咢片は白色、5個、楕円形、花弁状。花弁は蜜を出し、咢片よりかなり小さい、葯は赤紫色。袋果は舟形、長さ6~8㎜、側面に1 脈がある。花期は5~8月。


参考

1) Flora of Cjina
 Coptis  
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=107946
2)GBIF
 Coptis  
https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/taxonomygenus.aspx?id=2909
3)Plants of the World Online | Kew Science
 Coptis  
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:33110-1
4) 植物研究雑誌 24(1-12): 69-74(1949)
 佐竹義輔 : 日本産オウレン属について
5)植物研究雑誌27(11): 335-336(1952)
 檜山庫三 : コシジオウレンについて
6)植物研究雑誌79(5): 311-321(2004)
 門田裕一 : オウレン属ミツバオウレン節バイカオウレン亜節(キンポウゲ科)の分類学的再検討
  -日本産1新種と1新変種の記載-
7)植物研究雑誌 86(5) 2011.10 p.265~272
 門田裕一 : 本州産オウレン属(キンポウゲ科)の1新種,キタヤマオウレン  
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_086_265_272.pdf
8)植物研究雑誌 93(1): 37-53(2018)
 本 彰,瀬尾明弘,藤川和美 : シコクバイカオウレン(キンポウゲ科)の分類学的再検討  
http://www.missouribotanicalgarden.org/PlantFinder/PlantFinderDetails.aspx?taxonid=286171
6)#6 Southern Ridge and Valley Dolomite Seep  
https://www.segrasslands.org/blog/2017/12/13/6-southern-ridge-and-valley-dolomite-seep