ケカモノハシ 毛鴨の嘴

mark

Flora of Mikawa

イネ科 Poaceae  カモノハシ属

別 名 ヒザオリシバ、ツクシケカモノハシ
中国名 毛鸭嘴草 mao ya zui cao
英 名 many-spike flatsedge
学 名 Ischaemum anthephoroides (Steud.) Miq.
ケカモノハシの穂
ケカモノハシの小穂
ケカモノハシ葉鞘
ケカモノハシ
ケカモノハシ葉
ケカモノハシ果実
花 期 7~9月
高 さ 30~80㎝(高さ)
生活型 多年草
生育場所 海岸の砂地
分 布 在来種  北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国
撮 影 豊橋市 03.8.20
花穂が鴨のクチバシに似て、毛が生えているのでこの名で呼ばれる。茎の下部は砂の中を匍匐して広がり、節から根を出す。茎は分岐し、上部は直立する。葉や葉鞘に白い毛が密生する。葉は革質で厚く、幅0.8~1.2㎝、長さ15~30㎝の線形。葉舌は長さ3㎜、淡褐色、切形。花序は長さ4~5㎝の穂状。小穂は長さ約8㎜、2個ずつ対になってつく。第1小穂は有梗(雄性)、第2小穂は無梗(両性)、2小花。第2小穂の護頴には長い芒があり小穂から長く突き出る。雌性期には穂から白い柱頭が突き出て見え、雄性期になると次第に褐色になり、葯が突き出るようになる。2n=68,72
 草地にも生えるタイワンカモノハシはほとんど毛がなく、葉や葉鞘が平滑で無毛、小穂に5~7㎜の長い芒がある。第1苞頴に広い翼があるのも特徴。
 カモノハシは葉鞘の上部の縁だけに長毛があり、葉舌の縁が毛状になる以外はほぼ無毛。稈の節も無毛に近い。芒は小穂から普通、1~4.5㎜ほど突き出るだけである。第1苞頴は上部にだけ狭い翼がある。

カモノハシ属

  family Poaceae - genus Ischaemum

 多年草。葉身は線形または披針形、ときに、芳香がある。葉舌は膜質、縁には繊毛がある。花序は頂生、普通、掌状花序、亜掌状花序、または散房花序状の総状花序であり、まれに円錐花序になる。総状花序は短い花序柄があり、数個の小穂の対(円錐花序の場合、8対以上の小穂がある)で構成され、基部に同性の(homogamous)小穂の対はない。花序軸の節間と小花柄は細く、厚くなった縁の間に中間が半透明の縞模様がある。小穂の対は1個の有柄の小穂(第1小穂)と1個の無柄の小穂(第2小穂)からなる。無柄の小穂は両性、2小花からなり、背側が扁平。カルスは短く、鈍く、髭がある。第1苞穎(lower glume)は軟骨質で、先が草質、ときに、全体が草質になり、広凸面状~わずかに凹面状であり、側面は丸みを帯び、ときに、1~3個の深い円形の穴があり、先はほぼ鋭形。第2苞穎(upper glume)は舟形、背に竜骨がある。下側の小花(第1小花)は退化し、空の透明な護穎(lower lemma:第3穎)になる。上側の小花は完全で護穎(upper lemma:第4穎)は有柄形(stipitiform)、全縁、先に芒がある。芒は膝状に曲がり、無毛。小花柄のある小穂は無柄の小穂と同長または、短く、草質。
 世界に約30種あり、世界中の熱帯および亜熱帯に分布する。

カモノハシ属の主な種と園芸品種

1 Bothriochloa ischaemum (L.) Keng カモノハシガヤ 鴨の嘴茅
  synonym Bothriochloa taiwanensis (Ohwi) Ohwi
  synonym Dichanthium ischaemum (L.) Roberty
 韓国、中国、台湾、ロシア、アフガニスタン、ブータン、北インド、カザフスタン、キルギスタン、モンゴル、ネパール、パキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア、北アフリカ、ヨーロッパ原産。中国名は白羊草 bai yang cao。英名はyellow blue stem , smooth finger grass , smooth crabgrass , yellow bluestem。米国に帰化。別名はチョウセンカモノハシガヤ。
品種) 'El Kan' , 'Ganada' , 'King Ranch' , 'Plains' , 'WW-Iron Master' , 'WW-Spar'

2 Ischaemum anthephoroides (Steud.) Miq. ケカモノハシ 毛鴨の嘴
  synonym Ischaemum anthephoroides (Steud.) Miq. var. eriostachyum (Hack.) Honda
 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国原産。中国名は毛鸭嘴草 mao ya zui cao。英名はmany-spike flatsedge。別名はヒザオリシバ、ツクシケカモノハシ。花穂が鴨のクチバシに似て、毛が生えているのでこの名で呼ばれる。
 多年草。高さ30~80㎝。茎の下部は砂の中を匍匐して広がり、節から根を出す。茎は分岐し、上部は直立する。葉や葉鞘に白い毛が密生する。葉は革質で厚く、長さ15~30㎝×幅0.8~1.2㎝の線形。葉舌は長さ3㎜、淡褐色、切形。花序は長さ4~5㎝の穂状。小穂は長さ約8㎜、2個ずつ対になってつく。第1小穂は有梗(雄性)、第2小穂は無梗(両性)、2小花。第2小穂の護頴には長い芒があり小穂から長く突き出る。雌性期には穂から白い柱頭が突き出て見え、雄性期になると次第に褐色になり、葯が突き出るようになる。2n=68,72。花期は7~9月。

3 Ischaemum aristatum L. タイワンカモノハシ 台湾鴨の嘴 広義
 日本(本州の紀伊半島以西、四国、九州、沖縄)、韓国、中国、台湾、ベトナム原産。中国名は有芒鸭嘴草 you mang ya zui cao。開けた砂地の草地、しばしば海岸近くに生える。
 多年草。稈は緩く房状(株立)になり、直立または膝状に曲がって斜上し、高さ(30)40~80㎝、単純または枝分かれし、節は無毛。葉鞘は平滑、無毛または直軟毛がある。葉身は線状披針形、長さ5~25㎝×幅0.4~1㎝、無毛または薄く直軟毛があり、縁は平滑、先に向かってザラつき、基部は漸尖または狭まり、先は尖鋭形。葉舌は長さ2~3mm、膜質、無毛。総状花序は頂生、2個の枝(総)が対になり、背中合わせに圧着し、長さ4~7㎝。花序軸の節間はこん棒形、三稜形、外側の角(かど)がザラつきまたは白色の縁毛があり、内側の角(かど)は無毛または短い縁毛がある。小穂は無柄の小穂と有柄の小穂が対になり、各1個の節につく。無柄の小穂は完全、倒披針形~倒卵形(狭倒卵形)、長さ5.5~8㎜×幅2~2.3㎜。第1苞穎(lower glume)は革質、中間より下の側部は丸みを帯び、草質、幅が広く、上部に2竜骨、5~7脈があり、竜骨は狭い~広い翼があり、翼の縁はザラつく。上側の護穎(upper lemma)は芒がなくまたは短い芒があり、芒はよく発達しているかまたは不完全で、長さ12㎜以下。小穂は背側が扁平、無柄に見え、非対称、2竜骨があり、竜骨は翼があり、翼の片側は内巻き。花期および果期は7~10月。2n=56, 72。
3-1 Ischaemum aristatum L. var. aristatum タイワンカモノハシ 台湾鴨の嘴 狭義
  synonym Ischaemum crassipes (Steud.) Thell. var. formosanum (Hack.) Nakai
 日本(本州の紀伊半島以西、四国、九州、沖縄)、韓国、中国、台湾、ベトナム原産。中国名は有芒鸭嘴草 you mang ya zui cao。海岸の砂地や草原に生える。
 花序軸の節間および小花柄は、しばしば外側の角(かど)に沿って縁毛があり、内側の角(かど)は無毛または短い縁毛がある。無柄の小穂は倒卵形、広い翼があり、芒があり、芒は突き出し、長さ8~12㎜、膝状に曲がる。2n=72。 ※日本のタイワンカモノハシは上側の護穎(upper lemma)の芒が長さ5~7㎜とされ、芒がやや短い。
 高さ30~60㎝。茎の下部は匍匐する。茎、葉、葉鞘はすべて無毛で、平滑。稈の節も無毛。葉舌は長さ2~2.5㎜の膜質、無毛。穂状花序は長さ4~7㎝。小穂は長さ約8㎜、2個ずつ対になってつく。第1小穂は有梗(雄性)、第2小穂は無梗(両性)、2小花。第2小穂の護頴(第4頴)には長さ5~7㎜の芒があり小穂から突き出る。第1苞頴は革質で、広い翼がある。2n=72。花期は6~8月。
3-2 Ischaemum aristatum L. var. crassipes (Steud.) Yonek. カモノハシ 鴨の嘴
  synonym Ischaemum crassipes (Steud.) Thell. var. aristatum Nakai
  synonym Ischaemum crassipes (Steud.) Thell.
  synonym Ischaemum aristatum L. var. glaucum (Honda) T.Koyama
  synonym Ischaemum aristatum L. subsp. glaucum (Honda) T.Koyama [Flora of China]
 日本(本州、四国、九州)、韓国、中国、ベトナム原産。中国名は鸭嘴草 ya zui cao。海岸の砂地や海岸に近い砂地に生える。
 花序軸の節間および小花柄は、外側の角(かど)がザラつきまたは短い縁毛があり、内側の角(かど)は無毛または短い縁毛がある。無柄の小穂は倒披針形、狭い~広い翼があり、先は微突形~短い芒がある。芒は突き出ず、長さ1~3㎜、真っすぐ。2n=56。
 日本のカモノハシは芒は小穂から普通、1~4.5㎜ほど突き出る。第1苞頴は翼がタイワンカモノハシに比べ狭く、上部だけにある。また、葉舌の縁が毛状、葉鞘上部の縁に長毛がある。
 高さ30~90㎝。葉は長さ15~30㎝×幅5~8㎜。葉舌は長さ約2㎜、縁が毛状。小穂は長さ5~6㎜。花期は7~10月。

3-3 Ischaemum aristatum L. var. momiyamae (Honda) C.C.Hsu ハヤマカモノハシ 
 日本(相模、上総)、台湾北部に分布する。
 第1苞頴の背面に長毛を有する。

4 Ischaemum aureum (Hook. et Arn.) Hack. ハナカモノハシ 
 日本(沖縄、南西諸島)、台湾原産。海岸の岩場に生える。
 多年草、叢生する。稈は直立し、長さ25~45(50)㎝。葉鞘は平滑、無毛。葉は茎葉。葉舌は縁毛が無く[あり、]、膜質、長さ0.8~1㎜、切形。葉身は長さ3~12cm×幅3~8㎜、先は尖鋭形。花序は対の2個の総状花序からなり、長さ2~5㎝×直径5~6㎜。花序軸は節で壊れやすく、角(かど)があり、縁毛がある。毛は黄色で、長さ3~5㎜。花序軸の節間は長円形で、長さ2.5~3㎜、平らで、小花柄をもち、後ろから見てU字形またはV字形になり、基部に淡黄金色の長い絹毛がある。花序軸の節間の先端は横向き、皿形(cupuliform)。小穂は稔性と不稔が対につく。稔性の小穂は無柄、不稔の小穂は小花柄がある。小花柄はくさび形、角(かど)があり、縁毛がある。不稔の小穂は空の護穎を持つか、または雄性になり、披針形、背側が扁平、長さ4~4.5[6~7]㎜、稔性の小穂の長さと等しく、離れて脱落する。不稔の小穂の苞穎は紙質、竜骨があり、芒があり、芒は長さ1.5~2㎜。不稔の小穂の護穎は2個、苞穎で包まれ、1本の芒(膝状に曲がる)があり、芒は長さ15~18㎜。稔性の小穂は 1個の基部の不稔の小花と1個の稔性の小花からなり、小軸の伸長はなく、披針形、背側が扁平、長さ4~5[6~7]㎜、全体で落ち、付属の枝構造もつ脱落性。小穂のカルス(callus)は直軟毛(絹毛)があり、基部は鈍形につく。2個の苞穎は異なり、小花の先を超え、稔性の護穎よりも堅い。第1苞穎(lower glume)は披針形または卵形、小穂の長さと同長、紙質、2竜骨がある、側部に竜骨があり、翼はなく、一次脈は縁毛(黄色い毛)があり、表面は平ら、先は歯状に2裂する。第2苞穎(upper glume)は披針形、紙質、1竜骨があり、表面は直軟毛があり、上部に毛があり。先は歯状に、2裂し、1本の芒があり、芒は長さ2~3㎜。基部の不稔の小花は雄性、内穎をもつ。下側の不稔の小花の護穎は披針形、小穂の長さと同長、透明。稔性の護穎は長円形、長さ3~4㎜、膜質、竜骨は無く、先は2裂し、護穎の長さの0.33~0.5倍が、切れ込み、1本の芒がある。切れ込みからの主な護穎の芒は膝状に曲がり、全体の長さは15~25[18~20]mm、下部は捻じれ、無毛。内穎は護穎の長さと同じ。花期は3~5月。

5 Ischaemum barbatum Retz. コブカモノハシ 広義
 中国、台湾、カンボジア、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、西アフリカ、オーストラリア原産。中国名は粗毛鸭嘴草 cu mao ya zui cao。丘の斜面、開いた草地、沼地に生える。
5-1 Ischaemum barbatum Retz. var. gibbum (Trin.) Ohwi  コブカモノハシ 
 別名はハダカカモノハシ、イボカモノハシ

6 Ischaemum ciliare Retz. ヒメカモノハシ 姫鴨の嘴
  synonym Ischaemum ciliare Retz. var. scrobiculatum Honda
  synonym Ischaemum indicum sensu Merr.
  synonym Ischaemum aristatum auct. non L.
 中国、台湾、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、スリランカ、タイ、ベトナム原産。中国名は细毛鸭嘴草 xi mao ya zui cao。アメリカに帰化。別名はソウザンヒメカモノハシ。

7 Ischaemum minus J.Presl シマカモノハシ 島鴨の嘴
  synonym Ischaemum ischaemoides (Hook. et Arn.) Nakai
  synonym Ischaemum urvilleanum Kunth var. ischaemoides (Hook. et Arn.) Honda
 日本(小笠原諸島)、フィリピン、南アメリカ(アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ) 原産。英名はseashore centipede grass , bamboo grass , drought grass。
 多年草、マット状になる。匍匐茎がある。稈は伏臥し、または曲がりくねり(rambling)、長さ15~40㎝×直径2~6㎜、下部の節から発根する。葉鞘は外縁に毛がある。葉鞘の葉耳は直立する。葉舌は縁毛がなく、膜質、長さ約1mm。葉身は基部が心形、長さ2~15cm×幅4~14mm、先は鋭形または尖鋭形。花序は1対の総状花序からなり、背中合わせに圧着し、長さ1.5~4.5㎝。花序軸は節で壊れやすく、角(かど)があり、縁毛があり、花序軸の節間は円柱状、長さ約5mm、平らで、小花柄をもち、後ろから見てU字形またはV字形になる。花序軸の節間の先端は横向きの盃形(cupuliform)。小穂は、無柄の稔性の小穂と小花柄のある不稔の小穂が対につく。小花柄は円柱状、長さ5mm、縁毛がある。不稔の小穂はよく発達し、空の護穎になりまたは雄性、卵形、長さ6.2~6.6mm、稔性の小穂と同長、別れて脱落する。不稔の小穂の苞穎は紙質、竜骨があり、竜骨に翼があり、鋭形または尖鋭形、芒が無い。不稔の小穂の護穎は2個、苞穎に包まれ、芒が無い。小穂は基部に1個の不稔の小花と1個の稔性の小花をもち、小軸の伸長は無い。小穂は卵形、背側が扁平、長さ5~8mm、全体で落ち、脱落性で装飾枝構造をもつ。小穂のカルス(callus)は無毛、基部は切形でつく。苞穎は異なり、小花の先を超え、稔性の護穎よりも堅い。第1苞穎(lower glume)は卵形、小穂の長さと同長、革質、青白く、2竜骨があり、上部に竜骨があり、側部に竜骨があり、竜骨に翼があり、翼は狭く、上部に翼がつき、 6~8脈があり、表面は凸面状。第2苞穎(upper glume)は披針形、革質、1竜骨が上部につき、竜骨に翼があり、上部に翼がつき、3~5脈があり、縁は縁毛があり、先は鋭形。基部の不稔の小花は雄性、内穎をもつ。下側の不稔の小花の護穎は卵形、長さ5.8mm、小穂の長さの0.9倍、膜質、3脈があり、縁は縁毛があり、先は鋭形。稔性の護穎は卵形、長さ5.4mm、膜質、竜骨は無く、3脈があり、縁には縁毛があり、先が2裂し、芒は無いかまたは微突形、または芒が1本ある。主な護穎の芒は切れ込みから出て、全体の長さは1~3mm、小穂から突き出すか、またはほとんど出ない。内穎は護穎の長さと同長。葯は3個、長さ約2.6mm。柱頭は白色。花期は5~6月。

8 Ischaemum muticum L. ヤエヤマカモノハシ 八重山鴨の嘴
 日本(八重山群島)、台湾、アンダマン諸島、バングラデシュ、ビスマルク諸島、ボルネオ、カンボジア、キャロライン諸島、クリスマス島、ココス(キーリング)諸島、インド、ジャワ、ラッカディブ諸島、レッサースンダ諸島、マラヤ、モルディブ、マルク、ミャンマー 、ナンセイショット、ニューカレドニア、ニューギニア、ニコバル諸島、フィリピン、クイーンズランド、ソロモン諸島、スリランカ、スラウェシ、スマテラ、タイ、バヌアツ、ベトナム原産。中国名は无芒鸭嘴草 wu mang ya zui cao。別名はシバカモノハシ、ナンヨウカモノハシ。海岸近くの砂地に生える。
 多年草。根茎は強く、低出葉(cataphylls)に覆われる。稈はしばしば赤色になり、枝分かれが多く、匍匐茎がありまたは這い登り、長さ数mになる。花稈は直立し、長さ60cm以下、節は無毛。葉鞘は外側の縁に縁毛があり、その他は無毛またはまばらに伏毛がある。葉身は披針形、赤褐色を帯び、長さ2~10(~18)㎝×幅0.3~1.7㎝、無毛または下面にわずかに直軟毛があり、縁は平滑またはザラつき、基部は心形、ごく短い偽葉柄があり(pseudopetiolate)、先は鋭形。葉舌は長さ0.2~0.6㎜。総状花序は普通、対になり、背中合わせに圧着し、長さ2~5㎝、基部に鞘がつき包まれる。花序軸の節間と小花柄は長円形で、三稜形、外側の角(かど)には狭い翼があり、内側の角(かど)は無毛または繊毛がある。無柄の小穂は披針形、長さ4.8~7㎜×幅2.5~2.8㎜。第1苞穎(lower glume)は革質、下部2/3に丸みのある側面が広がり、草質で、強い脈があり、先の下に鋭い2竜骨があり、無毛、基部近くに翼があり、先は全縁。第2苞穎(upper glume)は上部の竜骨に翼がある。上側の護穎(upper lemma)はほぼ全縁、微突形または長さ約1㎜の小芒がある。有柄の小穂は側部が扁平、そうでなければ、無柄の小穂に似るかまたは小さく、芒がない。
9 Ischaemum rugosum Salisb. タイワンアイアシ 台湾間葦
  synonym Ischaemum akoense Honda
 日本(南西諸島)、中国、台湾、ブータン、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ネパール、フィリピン、スリランカ、タイ、オーストラリア(クイーンズランド)原産。中国名は田间鸭嘴草 tian jian ya zui cao。別名はコタイワンアイアシ。アフリカ、アメリカに帰化している。湿地、排水溝の土手、川の土手、その他の湿った、しばしばわずかに塩分を含んだ草地などに生える
 1年草。稈は緩く房状(株立)になり、直立~傾伏し、高さは20~100㎝で、しばしば枝分かれし、節に毛がある。葉鞘は緩く、紙質、軽く竜骨があり、無毛または直軟毛があり、基部がいぼ状の毛が散在し、縁に縁毛がる。葉身は線状披針形、長さ10~30㎝×幅0.5~2㎝、無毛または薄く直軟毛があり、縁はザラつき、基部は様々、円形で狭まり、または漸尖してやや偽葉柄があり、先は尖鋭形。葉舌は長さ2~5㎜。総状花序は頂生および腋生、対につき、背中合わせに圧着し、またはわずかに離れ、長さ3~11(~13)㎝。花序軸の節間は膨らみ、太いこん棒形、中間に線に沿って縁毛があり、内側の角(かど)は平滑。無柄の小穂は長円状卵形、長さ4~6×幅約2㎜。第1苞穎(lower glume)は全体に2竜骨があり、甲殻質、帯黄色の横方向の4~7本のうねが下部にあり、うねは鋭く、ほとんど連続し、上部は草質で吻合する(anastomosing)緑色の脈が多数あり、竜骨はザラつき、翼はなく、または、片側に翼があり、先は斜めの鈍形。上側の護穎(upper lemma)の芒は長さ1.2~2㎝。小穂は背側が扁平、サイズは様々であり、特に総状花序の先では大幅に縮小し、芒はない。小穂が未発達な場合、小花柄は伸長する。
9-1 Ischaemum rugosum Salisb. var. segetum (Trin.) Hack. タイワンアイアシ 
  synonym Ischaemum segetum Trin.
 日本(南西諸島)、台湾、ヒマラヤ、オーストラリアに分布。
 Kewscience、GBIFでは基本種に含める。

10 Ischaemum setaceum Honda コハナカモノハシ 
 台湾、カロリン諸島原産。

11 Ischaemum timorense Kunth タイヘイヨウカモノハシ 太平洋鴨の嘴
  synonym Andropogon timorensis (Kunth) Steud.
  synonym Ischaemum macrurum Stapf
 中国、台湾、アンダマン諸島、アッサム、バングラデシュ、ボルネオ、カンボジア、キャロライン諸島、フィジー、インド、ジャワ、ラオス、レッサースンダ諸島、マレーシア、マルク、ミャンマー、スリランカ、スラウェシ、スマトラ、タイ、ベトナム原産。中国名は帝汶鸭嘴草 di wen ya zui cao。別名はチモールカモノハシ。アフリカ、アメリカに帰化。

参考

1) Flora of China
 Ischaemum
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=116533
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Ischaemum
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30014929-2
3) World Flora Online
 Ischaemum
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000019218;jsessionid=B30407B9D2294A52659EB587BE6B81B2
4) World Checklist of Vascular Plants
 Ischaemum
https://wcvp.science.kew.org/
5) 植物研究雑誌第 37巻 第9号 p275-282(1962)
 許 建昌:台湾産イネ科植物雑記(1)
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_037_275_282.pdf