カニツリグサ 蟹釣草

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Flora of Mikawa

イネ科 Poaceae カニツリグサ属

中国名 三毛草 san mao cao
学 名 Trisetum bifidum (Thunb.) Ohwi
カニツリグサの花序
カニツリグサの小穂
カニツリグサ
カニツリグサ護頴の先
カニツリグサ果実
花 期 5~6月
高 さ 60~80㎝
生活型 多年草
生育場所 道端、草地
分 布 在来種 北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国、台湾、ニューギニア
撮 影 幸田町 02.5.3
和名の由来はこの穂でカニを釣って遊んだことから。茎は直立して叢生し、無毛で柔らかい。葉も柔らかく、長さ10~20㎝、幅3~5㎜の線形、両面とも有毛。葉舌は膜状、長さ2.5㎜。花序は長さ10~20㎝の円錐状、淡黄褐色、光沢があり、先が垂れさがる。小穂は長さ約7㎜、小花は2~3個。包頴は緑色、第1包頴は小さく、第2包頴は大きい。護穎は淡黄褐色~やや紫褐色、縁は膜状、背面や縁に刺があり、先が2裂し、長い芒をつける。果実(頴果)は長さ約3㎜の乳褐色、長楕円形。2n=28

カニツリグサ属

  family Poaceae - genus Trisetum

 多年草、叢生し、ときに短い根茎がある。葉身は狭~広線形、普通、平ら。葉舌は膜質。花序は中程度に緩く~穂状花序状の円錐花序、光沢がある。小穂は2から3個の小花をもち、各小花の下で関節で離れ、小軸は短い髭があり、最上部の小花を超えて伸び、小花が無くまたは痕跡の小花が先端につく。苞穎は披針形、不等長またはほぼ等長、小穂より短く、竜骨があり、草質または膜質、縁が広く、透明。第1苞穎(lower glume)は1(~3)脈がある。第2包頴(upper glume)は3脈があり、先鋭形または尖鋭傾。小花のカルスは無毛または短い髭がある。護穎は披針形、側部が扁平、膜質から薄い革質、5脈があり、無毛、背中の真ん中より上から芒があり、先は2歯があり、歯はしばしば短芒がある。芒は膝状に曲がり、捻じれた柱または単に外側に曲がる。内穎は補題よりわずかに短い、または明らかに短い、護穎の縁から離れ分離する。子房は無毛またはほとんど無毛。穎果は点状のへそがある。胚乳はときに、液状。
 世界に約50種あり、アフリカ北部を除く世界の温帯地域、熱帯の山地に分布する。

カニツリグサ属の主な種と園芸品種

1 Trisetum bifidum (Thunb.) Ohwi  カニツリグサ 蟹釣草
  synonym Trisetum flavescens (L.) P.Beauv. var. bifidum (Thunb.) Makino
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、台湾、ニューギニア原産。中国名は三毛草 san mao cao。道端、草地に生える。
 多年草、高さ60~80㎝。茎は直立して叢生し、無毛で柔らかい。葉も柔らかく、長さ10~20㎝、幅3~5㎜の線形、両面とも有毛。葉舌は膜状、長さ2.5㎜。花序は長さ10~20㎝の円錐状、淡黄褐色、光沢があり、先が垂れさがる。小穂は長さ約7㎜、小花は2~3個。包頴は緑色、第1包頴は小さく、第2包頴は大きい。護穎は淡黄褐色~やや紫褐色、縁は膜状、背面や縁に刺があり、先が2裂し、長い芒をつける。果実(頴果)は長さ約3㎜の乳褐色、長楕円形。2n=28。花期は5~6月。
1-1 Trisetum bifidum (Thunb.) Ohwi f. biaristatum (Nakai) M.Mizush. フタヒゲカニツリ 

2 Trisetum flavescens (L.) P.Beauv.
 ヨーロッパ、地中海沿岸地域、イラン原産。英名はyellow oat-grass。
品種) 'Peter Hall' (v)

3 Trisetum koidzumianum Ohwi ミヤマカニツリ 深山蟹釣
 日本固有種。本州中部に分布する。別名はタカネカニツリ。高山の草原に生える。
 多年草。叢生し、緩く群生する。根茎は短い。稈は直立し、長さ12~25cm。上部の稈の節間には直軟毛がある。葉鞘は直軟毛がある。葉鞘は縁毛のない膜質、楕円形の長さ1~2mm。葉身は長さ5~6cm×幅2~4mm、表面は無毛または直軟毛がある。花序は円錐花序、開き、披針形、密で、長さ5~9cm×幅0.8~1.5cm。一次も円錐花序の枝は3~5本あり、枝は平滑。小穂は単生する。稔性の小穂は小花柄があり、2個の稔性の小花からなり、不毛の小軸(rhachilla)が伸びるか、または先の小花が削減される。小穂はくさび形、側部が扁平、長さ4.5~5.5㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節が離れる。小花のカルスは毛がある。苞穎は宿存し、等長、小穂より短く、稔性の護穎よりも質が薄く、光沢があり、大きく開く(gaping)。第1苞穎(lower glume)は披針形、長さ3~3.5㎜、第2苞穎(upper glumee)と同長、膜質、1竜骨、3脈があり、先は鋭形。第2苞穎(upper glumee)は披針形、長さ3~3.5㎜、隣接する稔性の護穎の長さの0.75~0.85倍、膜質、1竜骨、3脈があり、先は鋭形。稔性の護穎は披針形、長さ4㎜、膜質、竜骨があり、5脈があり、先は歯があり、2裂し、鋭形、1本の芒がある。主要な護穎の芒は背側につき、護穎の0.25倍上まで伸び、膝状に曲がり、全体で長さ5㎜、柱は真っすぐまたはわずかに捻じれる。内穎は大きく開き(gaping)、透明。葯は3個。子房は無毛。穎果は付着性果皮(adherent pericarp)をもつ。へそは点状(punctiform)。花期は7~8月。

4 Trisetum sibiricum Rupr. チシマカニツリ 千島蟹釣
  synonym Trisetum bifidum (Thunb.) Ohwi subsp. sibiricum (Rupr.) T.Koyama
 日本(北海道、本州)、韓国、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン、南西アジア(コーカサス)、東ヨーロッパ、北アメリカ(アラスカ)原産。中国名は西伯利亚三毛草 xi bo li ya san mao cao。別名はカニツリススキ。草が茂った山の斜面、開いた林内、低木の間の湿地。
 多年草。緩く房状になり、短い根茎がある。稈は単生または少数、高さ50~120㎝、直径1.5~3㎜、無毛、3~4節がある。葉鞘はほとんどが節間よりも短く、無毛または短い毛があり、縁は基部近くで結合する。葉身は広線形、長さ6~20㎝×幅4~9㎜、無毛または上面に直軟毛が散在する。葉舌は長さ1~2㎜。円錐花序は緩く、外形が狭長円形~披針形、長さ10~20㎝、多数、分枝し、黄褐色、最下の節に3~8本の枝がつき、わずかにザラつき、長さ6㎝以下。小穂は長さ5~10㎜、小花が2~4個つき、小軸の毛は長さ約1㎜。苞穎は不等長、第1苞穎(lower glume)は長さ4~6㎜、第2苞穎(upper glumee)は長さ5~8㎜、先は尖鋭形。カルス(callus)は無毛または非常に短い毛がわずかにある。護穎は長さ5~7㎜、堅く、黄金褐色、細かいが密にザラつき、上部1/3から芒があり、先は2歯、歯は三角形、芒は長さ5~9㎜、強く反曲し、下部が真っすぐまたはわずかに捻じれる。内穎は護穎の長さの3/4または後穎の長さ以上あり、竜骨は不明瞭にザラつく。葯は長さ2~3㎜。花期および果期は6~8月。

5 Trisetum spicatum (L.) K.Richt. リシリカニツリ 利尻蟹釣 広義
  synonym Trisetum molle Kunth subsp. alascanum (Nash) Rebr.
  synonym Trisetum spicatum (L.) K.Richt. var. alascanum (Nash) Malte ex Louis-Marie
  synonym Trisetum alascanum Nash
 日本(北海道、本州中部)、韓国、中国、台湾、モンゴル、ロシア、アフガニスタン、ブータン、北インド、カザフスタン、キルギスタン、ネパール、パキスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、南西アジア(コーカサス)、オーストラリア、ヨーロッパ、南北アメリカ原産。中国名は穗三毛 sui san mao。英名はnarrow false oat。別名はタカネカニツリ。山の斜面の草地、高山の草地、氷河のモレーン、茂みの中、山地の林内などに生える。
 多年草、密に叢生する。稈は直立し、高さ3~60㎝、直径1~2㎜、有毛~綿毛があり、特に円錐花序の下に綿毛が多く、1~3節がある。葉鞘は毛がある。葉身は平らまたは巻、長さ2~15㎝×幅2~4㎜、両面または下面だけに密~疎に毛があるか、または無毛、縁にしばしば剛毛がある。葉舌は長さ1~2㎜。円錐花序は穂状花序状、密集し、外形が線形~卵形または長円形、下部がときに途切れ、長さ1.5~11㎝。枝は短い伏した毛~綿毛がある。小穂は長さ4~9㎜、小花が2(~3)個つき、小軸の毛は長さ1~1.5㎜。苞穎はほぼ等長またはわずかに不等長。第1苞穎(lower glume)は長さ4~8㎜、第2苞穎(upper glumee)は長さ5~9㎜、先は尖鋭形、たまに短い芒がある。護穎は長さ4~7㎜、細かくザラつくか毛があり、上部の1/4~1/3から芒があり、先は普通、2歯があり、歯はしばしば微突形、ときにほぼ全縁。芒は長さ2~7㎜、緩く捻じれ、下部が弱く膝状に曲がるか、基部で反曲するか、またはほぼ真っ直ぐ。内穎は細かくザラつく。葯は長さ0.7~1.3㎜。花期および果期は6~9月。
5-1 Trisetum spicatum (L.) K.Richt. subsp. spicatum ホザキカニツリ 穂咲蟹釣
 中国、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は穗三毛 sui san mao。山の斜面の草地、高山の草地に生える。
 高さ30㎝以下。稈、葉身、および鞘は、ほぼ無毛~密毛がある。円錐花序は狭長円形、長さ2~4㎝、普通、帯紫色または帯褐色、密。小穂は2個の小花をもち。第1苞穎(lower glume)は長さ4~5.5㎜、竜骨はザラつく。第2苞穎(upper glumee)は長さ5~6㎜。最下の護穎は長さ4~5㎜、平滑または細かくザラつき、芒は長さ4~6㎜、弱く膝状に曲がり、下部が捻じれる。花期および果期は6~9月。
5-2 Trisetum spicatum (L.) K.Richt. subsp. alascanum (Nash) Hultén リシリカニツリ利尻蟹釣 狭義
 日本、韓国、中国、台湾、ロシア(極東)ブータン、インド(シッキム)、北米(カナダ、米国)原産。中国名は大花穗三毛 da hua sui san mao。砂利の斜面、高山の草地に生える。
 高さ60㎝以下。稈は毛がある。葉身および鞘は無毛または直軟毛がある。円錐花序は線状楕円形、密または基部がわずかに緩く、長さ5~11㎝、緑色または帯褐色。小穂は2個または3個の小花をもつ。第1苞穎(lower glume)は長さ5~8㎜、第2苞穎(upper glumee)は長さ5.5~9㎜。最下の護穎は長さ5~7㎜、ザラつき、先は鋭形または2歯状。 芒は長さ5~7㎜、わずかに外側に曲がり、捻じれない。花期および果期は6~9月。
5-3 Trisetum spicatum (L.) K.Richt. subsp. alascanum (Nash) Hultén var. formosanum (Honda) Ohwi タイワンカニツリグサ 
5-4 Trisetum spicatum (L.) K.Richt. subsp. molle (Kunth) Hultén キタダケカニツリ 北岳蟹釣
  synonym Trisetum spicatum (L.) K.Richt. var. kitadakense (Honda) Ohwi
  synonym Trisetum molle Kunth
  synonym Trisetum spicatum (L.) K.Richt. var. molle (Kunth) Beal
 本州中部(南アルプス)に分布。
 全体にほぼ無毛。茎や葉鞘に毛がない。

6 Trisetum umbratile (Kitag.) Kitag. ヒカゲカニツリ
  synonym Trisetum sibiricum Rupr. subsp. umbratile (Kitag.) Tzvelev
 朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は绿穗三毛草 lü sui san mao cao。

参考

1) Flora of China
 Trisetum
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=133790
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Trisetum
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:19214-1
3) World Flora Online
 Trisetum
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000039353;jsessionid=532E6207C44019A73F836B6F412232B8
4) World Checklist of Vascular Plants
 Trisetum
https://wcvp.science.kew.org/
5) FNA - Flora of North America
 Trisetum
http://beta.floranorthamerica.org/Trisetum