カマツカ 鎌柄

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Flora of Mikawa

バラ科 Rosaceae カマツカ属

別 名 ウシコロシ
中国名 毛叶石楠 mao ye shi nan
学 名 Pourthiaea villosa (Thunb.)Decne.
Pourthiaea villosa (Thunb.)Decne. var. villosa
Pourthiaea villosa (Thunb.)Decne. var. laevis (Thunb.) Stapf.
カマツカの花
カマツカの花横
カマツカの花裏
カマツカの蕾
カマツカの果実
カマツカの種子
カマツカの鋸歯
カマツカの幹
カマツカ
カマツカ
カマツカ葉表
カマツカ葉裏
カマツカ紅葉
花 期 4~6月 (果期 11~12月)
高 さ 5~7m
生活型 落葉高木
生育場所 山地の日当たりの良い林縁
分 布 在来種  日本全土、朝鮮、中国、台湾
撮 影 幸田町  13.4.25(花)
田原市  13.12.11(果実)
広義のカマツカは日本、朝鮮、中国、台湾に分布し、葉形、毛の有無など多型で、いくつかの変種に分けられている。日本のカマツカ(狭義)は var. laevis であり、別名、コバノカマツカという。
 葉は長枝では互生し、短枝では輪生する。成葉はほとんど毛がなく、洋紙質、長さ4~7㎝の広倒卵形~狭倒卵形、縁には細かい鋭鋸歯がある。複散房花序に、直径約1㎝の白色の5弁花を多数つける。花弁は円形。雄しべの本数は約20個、長くて目立つ。花柱は3個。萼は無毛。果実は長さ7~10㎜、幅6~8㎜の先がやや平らな楕円形~ほぼ球形、赤く熟し、果肉が橙色で、中に1個の種子が入る。種子は長さ4~5㎜、紫褐色。
 ワタゲカマツカは基本変種 var. villosa であり、若い枝、葉柄に白色の軟毛が多く、葉が厚くて大きく、長さ10㎝を超える。萼に白色の軟毛が密生する。
 カマツカとワタゲカマツカの毛の量などが中間のものをケカマツカ var. zollingeri という。変化は連続的であり、var. laevis、var. villosa、 var. zollingeri を含めてカマツカ  var. villosa とする見解もある。

カマツカ属

  family Rosaceae - genus Pourthiaea

 落葉低木または高木。葉は互生し、葉柄がある。葉身は単葉、縁は鋸歯があり、側脈は葉縁に達しない。托葉は早落性。花序は複散房花序。花序軸や花柄に突起する目立つ皮目がある。花は放射相称、小型、白色。萼片は5個、宿存する。花弁は5個。雄しべは多数。花柱は2~4本、基部で合着し、上半部で離生し、心皮は2~4個。各心皮は2胚珠をもつ。果柄にいぼ状突起がある。果実はナシ状果、倒卵状楕円形、熟すと、赤色になる。果肉は塊状に集合した石細胞とそれを取り囲む柔組織よりなる。
 世界に約15種あり、アジア東部に分布し、日本には1種がある。
葉や花柄に毛が多いものにケカマツカ、ワタゲカマツカがあるが、葉の形や毛の状態などは変異が多く、厳密な区別は難しい  世界に約10種があり、熱帯のアフリカ、アジア、オーストラリア、オセアニアに分布する。
Pourthiaea amphidoxa (C.K.Schneid.) Stapf Pourthiaea arguta (Wall. ex Lindl.) Decne. Pourthiaea blinii (H.Lév.) Iketani & H.Ohashi Pourthiaea pilosicalyx (T.T.Yu) Iketani & H.Ohashi Pourthiaea salicifolia Decne. Pourthiaea tomentosa (T.T.Yu & T.C.Ku) Long Y.Wang, W.Guo & W.B.Liao Pourthiaea villosa (Thunb.) Decne.

カマツカ属の主な種と園芸品種

1 Photinia arguta Lindley
  synonym Pourthiaea arguta (Wall. ex Lindl.) Decne. [Kewscience]
 中国、インド、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム原産。中国名は锐齿石楠 rui chi shi nan。
 低木または小高木。小枝は、若いときは紫褐色、古くなると褐灰色、角(かど)があり、初めは綿毛があり、古くなると無毛。芽は狭卵形または長円形、長さ3~5㎜、先は鋭形。芽鱗は数個、紫褐色。葉柄は長さ4~6㎜、若いときは綿毛がある。葉身は披針形、長円状披針形、または長円状倒披針形、長さ4.5~8㎝×幅2~3㎝、側脈は8~10対、両面に若いときは長い灰色の綿毛があり、古くなるとほぼ無毛または脈にのみ毛があり、基部はくさび形、縁は細かく鋭く鋸歯があり、、先は尖鋭形。複散房花序は頂生し、長さ2~5(~8)㎝×幅1.5~3㎝、花が数個~多数つく。花序軸柄と花柄には長い灰色の綿毛がある。苞は線形または線状披針形、長さ3~4㎜、初めはわずかに長い綿毛があり、無毛になりまたは鈍くなる。花柄は長さ3~6㎜。花托筒は円蓋形、長さ1.5~2㎜×幅2~3㎜、外側に密に長い灰色の綿毛がある。萼片は三角形、長さ1~2.5㎜×幅約2mm、先は±鋭形または鈍形。花弁は長さ3~4㎜×幅2~3㎜、倒卵形、普通、基部近くに綿毛があり、、基部に短い爪部があり、先は鈍形。雄しべは20本。子房は密に長い綿毛がある。花柱は3本、基部で合着する。果実はほぼ球形、直径6~7㎜、無毛または有毛。
※Kewscienceでは日本、韓国、中国、台湾、東ヒマラヤ、チベット、アッサム、バングラデシュ、ラオス、ミャンマー、ベトナム原産とし、Pourthiaea beauverdiana、Pourthiaea lucidaなど多種を含めて統合している。

2 Pourthiaea beauverdiana (C.K.Schneid.) Hatus.
  synonym Photinia beauverdiana C. K. Schneider
  synonym Pourthiaea arguta (Wall. ex Lindl.) Decne. [Kewscience]
 中国、台湾、ブータン、ベトナム原産。中国名は中华石楠 zhong hua shi nan。
 低木または小高木、落葉性、高さ3~10m。小枝は紫が褐色~黒褐色、円柱形、普通、無毛で、灰色の皮目が散在する。芽は卵形で、微軟毛があり、先は鋭形。芽鱗は数個、暗褐色。葉柄は長さ5~10㎜、微軟毛がある。葉身は長円形、卵形、または楕円形~倒卵形、長さ(3~)5~13㎝×幅2~5㎝、紙質、側脈は(6~)9~14対、下面は脈に沿って直軟毛があり、上面は光沢があり、無毛、基部はくさび形~円形、縁は鋸歯縁、先は鋭形または短い尖鋭形~尾状。複散房花序は頂生、長さ4~7㎝×幅5~10㎝、花が多数つく。花序軸と花柄は無毛、多数の長方形の皮目をもつ。苞は褐色、線形、長さ3~5㎜、無毛。花柄は長さ0.7~1.5㎝、果時に長さ2cm以下。花は直径5~7mm。花托筒は長さ1~1.5㎜、外側は普通、無毛。萼片は広三角形または三角状卵形、長さ1~2㎜、先は鋭形または±鈍形。花弁は白色、卵形または倒卵形、長さ2~4㎜×幅2.5~3.5㎜、無毛、先は鈍形。雄しべは20本、花弁よりわずかに短いか、ほぼ同長。花柱は(2~)3本、雄しべをやや超えず、基部は合着する。果実は紫赤色、卵形またはほぼ球形、長さ7~8㎜×幅5~6㎜、無毛、わずかに皮目がある。花期は4~5月。果期は7~8月。
2-1 Photinia beauverdiana var. beauverdiana セイバンカマツカ 

  synonym Pourthiaea beauverdiana (C.K.Schneid.) Hatus. var. notabilis (Rehder et E.H.Wilson) Hatus.

 中国、台湾、ブータン、ベトナム原産。中国名は中华石楠 zhong hua shi nan
 葉身は長円形、楕円形、長円状楕円形、または倒卵状長円形、長さ5~13㎝、側脈は9~14対、先は鋭形~短い尖鋭形。

3 Pourthiaea lucida Decne.  タイワンカナメモチ 
  synonym Photinia lucida (Decaisne) C. K. Schneider
  synonym Pourthiaea arguta (Wall. ex Lindl.) Decne. [Kewscience]  台湾原産。中国名は台湾石楠 tai wan shi nan。

4 Pourthiaea villosa (Thunb.) Decne. カマツカ 鎌柄 [広義]
  synonym Photinia villosa (Thunberg) Candolle

  synonym Pourthiaea villosa var. parvifolia (E.Pritz.) Iketani & H.Ohashi シマコバノカマツカ

  synonym Photinia villosa var. parvifolia (E.Pritz.) P.S.Hsu & L.Chu Li シマコバノカマツカ

  synonym Pourthiaea villosa (Thunb.) Decne. var. longipes Nakai ナガエカマツカ

  synonym Pourthiaea kankoensis Hatus.
 日本、朝鮮、中国原産。中国名は毛叶石楠 mao ye shi nan。英名はChristmas berry , oriental photinia。
 低木または高木、落葉性、高さ2~5m。小枝は、若いときは暗褐色から赤褐色、古くなると灰褐色、初めは白色の絨毛があり、古くなると無毛、長円形または楕円形の皮目が散在する。芽は卵形、長さ2~4㎜、先は鋭形~短い尖鋭形。芽鱗は褐色、無毛。葉柄は長さ2~6mm、絨毛がある。葉身は倒卵形、長円状倒卵形、または楕円形、長さ3~8㎝×幅2~4㎝、草質、側脈は5~7対、両面に初めは白色の絨毛があり、上面は無毛になり、またはほぼ無毛で下面の脈にのみ絨毛があり、基部はくさび形、先の縁には密に鋭い鋸歯があり、葉先は尾状。花序は頂生、散房花序、まれに散形花序、長さ2~5㎝×幅3~6㎝、花が(5~)10~20個またはそれ以上つき、花序軸と花柄に絨毛があり、果時に密な、長円形または楕円形の小さな皮目がある。苞は早落性、錐形または線形、長さ2~4mm。花柄は長さ1.5~2.5cm。花は長さ7~12mm。花托筒は長さ2~3㎜、外側に白色の絨毛があるかまたは無毛。萼片は三角状卵形、長さ2~3㎜、先は鈍形。花弁は白色、ほぼ円形、直径4~5㎜、内面の基部近くに直軟毛があり、短い爪部がある。雄しべは20本、花弁より短い。子房は先に密に白色の絨毛がある。花柱は3本、中間から分離、無毛。果実は赤色または黄赤色、楕円形または卵形、長さ8~10(~16)㎜×幅6~8(~11)㎜、わずかに直軟毛があり、萼片が直立する。花期は4~5月。果期は8~9月(Flora of China)
4-1 Pourthiaea villosa (Thunb.) Decne. var. villosa  カマツカ 鎌柄
  synonym Photinia villosa var. villosa
  synonym Pourthiaea villosa (Thunb.) Decne. var. zollingeri (Decne.) Nakai
  synonym Pourthiaea villosa (Thunb.) Decne. var. laevis (Thunb.) Stapf
 日本全土、朝鮮、中国、台湾原産。中国名は毛叶石楠 mao ye shi nan。別名はウシコロシ。 oriental photinia
 落葉高木、高さ5~7m。葉は長枝では互生し、短枝では輪生する。成葉はほとんど毛がなく、洋紙質、長さ4~7㎝の広倒卵形~狭倒卵形、縁には細かい鋭鋸歯がある。複散房花序に、直径約1㎝の白色の5弁花を多数つける。花弁は円形。雄しべの本数は約20個、長くて目立つ。花柱は3個。萼は無毛。果実は長さ7~10㎜、幅6~8㎜の先がやや平らな楕円形~ほぼ球形、赤く熟し、果肉が橙色で、中に1個の種子が入る。種子は長さ4~5㎜、紫褐色。花期は4~6月。果期は11~12月。2n=68。
【Flora of Chinaの解説】
 葉柄、葉身、花柄、および花托筒に白色の絨毛がある。葉身は倒卵形または長円状倒卵形。複散房花序は花が10~20個またはそれ以上つく。果実は長さ8~10㎜×幅6~8㎜。

4-1-1 Pourthiaea villosa (Thunb.) Decne. var. villosa f. aurantiaca T.Yamanaka  キミノカマツカ 
 果実が黄色に熟す。
4-2 Photinia villosa var. glabricalycina L. T. Lu & C. L. Li
 中国原産。中国名は光萼石楠 guang e shi nan。
 葉柄、葉身、および花柄にはまばらに白色の絨毛がある。葉身は倒卵形または長円状倒卵形。 花序は単純な散房花序または散形花序、花は5~8個またはそれよりわずかに多い。花托筒は外側が無毛。果実は長さ0.8~1.4㎝×幅9~10mm。
4-3 Photinia villosa var. sinica Rehder & E. H. Wilson
 中国原産。中国名は庐山石楠 lu shan shi nan。
 葉柄、葉身、および花柄にはまばらに白色の絨毛がある。 葉身は楕円形または長円状楕円形、まれに、長円状倒卵形。花序は普通、単純な散房花序、花が5~8(~15)個つく。花托筒にはまばらに絨毛がある。果実は長さ0.8~1.6㎝×幅0.9~1.1㎝。

4-4 Pourthiaea villosa (Thunb.) Decne. var. chingshuiensis (T.Shimizu) Iketani et H.Ohashi セイスイカマツカ 

  synonym Photinia chingshuiensis (T. Shimizu) T. S. Liu & H. J. Su [Flora of China]

  synonym Pourthiaea chingshuiensis T.Shimizu 
 台湾原産。中国名は清水石楠 qing shui shi nan。Flora of Chinaでは独立種。

参考

1) Flora of China
 Pourthiaea
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=125105
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Pourthiaea
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:33978-1
3) World Flora Online
 Photinia Lindl.
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000029322
4) 植物研究雑誌 66(6): 352–355(1991)
 池谷祐幸,大橋広好:カマツカ属(バラ科)とカナメモチ属
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_066_352_355.pdf