イボクサ 疣草

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Flora of Mikawa

ツユクサ科 Commelinaceae イボクサ属

別 名 イボトリグサ
中国名 疣草 you cao
英 名 wartremoving herb, Asian-spiderwort
学 名 Murdannia keisak (Hassk.) Hand.-Mazz.
Aneilema keisak (Hassk.) Hand.-Mazz
イボクサ花
イボクサ花横
イボクサ外花被
イボクサ果実
イボクサ葉基部の鞘
イボクサ茎
イボクサ
イボクサ雄しべ
イボクサ葉
イボクサ種子
花 期 8~10月
高 さ 20~30㎝
生活型 1年草
生育場所 水田、湿地
分 布 在来種 本州、四国、九州、沖縄、朝鮮、中国、ネパール、ラオス、カンボジア
撮 影 額田町  03.9.20
水田でよく見られる雑草。和名の由来は葉の汁をつけるとイボがとれることから。北アメリカやヨーロッパなどに帰化している。
 茎は赤味を帯びることが多く、片側に毛条があり、よく分枝し、下部は地を這い、上部が斜上する。葉は長さ3~7㎝、幅5~10㎜の狭披針形で、ツユクサより狭く、葉の数も少ない。葉の基部は鞘状になる。花は直径約13㎜、茎頂に1個ずつつく。内花被片(花弁)は3個、長さ5~8㎜の白色で先が淡紅色。外花被片(萼片)も3個、長さ5~6㎜、緑色、周囲が上へ曲がり、内側が窪み、外面の先に毛がある。雄しべは6個、うち、紫色の3個は仮雄ずいである。葯は青色。花は1日でしぼみ、花後に外花被が大きくなって蒴果を包む。蒴果は長さ8~10㎜の楕円形、3室に分かれ、熟すと裂開する。種子は長さ2~3㎜、各室1~2個。

イボクサ属

  family Commelinaceae - genus Murdannia

 多年草、ときに1年草。 根はしばしば紡錘形に肥厚する。根茎は有または無。茎は匍匐または斜上し、ときに花茎状になる。葉は互生で線形、または不稔の主茎の根生ロゼットになる。扇状集散花序(cincinnus , pf. cincinni)は単生または多数、円錐花序を形成し、ときに頭状花序に短縮され、ときに花が単生する。花は放射相称。萼片は離生、浅く~強く舟形になる。花弁は離生、紫色、青色、ピンク色、黄色、またはほぼ白色、円形または倒卵形。 稔性の雄しべは3本、ときに1(または2)本で不稔。 花糸は無毛または有毛。葯室は縦に裂開する。仮雄雄しべは(0~)3(または4)本、花弁に対生してつく。仮葯(antherodes)は矢じり形または3全裂。子房は3室。胚珠は各室に1~7個。蒴果は3-バルブ、卵形、楕円体、または球形。種子は各バルブごとに1~2個、1列に入り、四角形、網目、孔ト、しわ、または疣がある。へそは円形。
 世界に約50種があり、主にアジアの熱帯および亜熱帯地域に分布する。

イボクサ属の主な種と園芸品種

1 Murdannia edulis (Stokes) Faden ヒロハイボクサ 広葉疣草
  synonym Murdannia formosana (N.E.Br.) K.S.Hsu
 中国、台湾、インド、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ネパール、ニューギニア、フィリピン、タイ、ベトナム原産。中国名は葶花水竹叶 ting hua shui zhu ye。

2 Murdannia keisak (Hassk.) Hand.-Mazz. イボクサ 疣草
  synonym Murdannia triquetra auct. non (Wall. ex C.B.Clarke) Brückn.
 日本(本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国、ネパール、ラオス、カンボジア原産。中国名は疣草 you cao。英名はwartremoving herb, Asian-spiderwort。別名はイボトリグサ。
 1年草、高さ20~30㎝。茎は赤味を帯びることが多く、片側に毛条があり、よく分枝し、下部は地を這い、上部が斜上する。葉は長さ3~7㎝、幅5~10㎜の狭披針形で、ツユクサより狭く、葉の数も少ない。葉の基部は鞘状になる。花は直径約13㎜、茎頂に1個ずつつく。内花被片(花弁)は3個、長さ5~8㎜の白色で先が淡紅色。外花被片(萼片)も3個、長さ5~6㎜、緑色、周囲が上へ曲がり、内側が窪み、外面の先に毛がある。雄しべは6個、うち、紫色の3個は仮雄ずいである。葯は青色。花は1日でしぼみ、花後に外花被が大きくなって蒴果を包む。蒴果は長さ8~10㎜の楕円形、3室に分かれ、熟すと裂開する。種子は長さ2~3㎜、各室1~2個。花期は8~10月。

3 Murdannia loriformis (Hassk.) R.S.Rao et Kammathy シマイボクサ 島疣草
  synonym Murdannia nudiflora auct. non (L.) Brenan
  synonym Murdannia simplex auct. non (L.) Brenan
  synonym Murdannia angustifolia (N.E.Br.) H.Hara
 日本(琉球諸島)、中国、台湾、インド、インドネシア、ニューギニア、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム原産。中国名は牛轭草 niu e cao。別名はナガバイボクサ。湿った畑や荒地、水田に生える。
 多年草。根はひげ根、直径0.5~1㎜、無毛または綿毛がある。根茎は無い。主茎は発達しない。稔性の茎は数本つき、ロゼットから生じ、拡散しまたは斜上し、長さ15~50(~100)cm、無毛または片側に微軟毛があり、ごくまれに密に粗毛がある。根生葉は葉身が線形、長さ5~15(~30)㎝×幅6~9㎜、縁は下部だけ、縁毛がある。茎葉は短く、鞘の口の片側だけに縁毛があり、他は無毛で、ごくまれに密に小粗毛(hirsutulous)がある。扇状集散花序(cincinni)は頂生、単生または2~3個が円錐花序、類頭状花序を形成し、数個の花が密につく。下部の総苞片は葉状であるが葉よりも小さく、上部の総苞片は非常に小さく、長さ10mm未満。花序柄は長さ約2.5㎝。苞は長さ約4㎜、脱落性。花柄はわずかに曲がり、果時に長さ2.5~4㎜。萼片は卵状楕円形、長さ約3㎜、草質。花弁は紫赤色または青色、倒卵状円形。稔性の雄しべは2本、花糸には毛がある。仮雄しべは3本。仮葯(antherodes)は3全裂。蒴果は卵状球径、3稜形、長さ3~4mm。種子は各バルブに2個、黄褐色、放射状の条線があり、細かく白色の網目があり、穴も疣もない。花期は5~10月
品種) Bright Star('Ppimur004')(v)

4 Murdannia nudiflora (L.) Brenan アレチイボクサ 荒地疣草
 日本(南西諸島) 、中国、インド、インド洋諸島(アンダマン諸島、ニコバル諸島)、アッサム、スリランカ、ネパール 、パキスタン、西ヒマラヤ、東ヒマラヤ、バングラデシュ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ニューギニア、パプアニューギニア、太平洋諸島(サモア、ミクロネシア)、西オーストラリア原産。中国名は裸花水竹叶 luo hua shui zhu ye。英名はDoveweed。水田の畦や芝生,川の土手,道端などの日当たりのよいやや湿った場所からやや乾燥した場所に生える。福岡県、三重県、高知県などで野生化が確認されている。
 1年草。茎は単生または分岐して地上を長く這い先が立ち上がる。高さ10~50㎝。葉は長さ2~10㎝、幅 0.5~1㎝。葉身は線状披針形~狭矩形で基部の縁にまばらに開出した単列毛が生える。葉先は鋭形から鋭尖形。葉鞘は無毛または有毛で、上部から合着部にかけて開出した単列毛が生える。花序は頂生または腋生。花梗(花序柄)は 2~9㎝, 直立または斜上して両性花または稀に雄花をつける.小苞は早い時期に脱落する.花柄はほぼ直立し長さ3~5㎜。萼片は卵状楕円形で長さ約3㎜。花弁は3個、長さ3~5㎜、 倒卵形で淡紅色から淡赤紫色。雄しべは6個、うち2個は大きく完全で、花糸に淡紅色をした数珠状の単列毛が多く生え、4個は仮雄しべになる。蒴果は長さ3~4㎜、3室で、各室に2個の種子ができ、3片に裂開する。種子は黄褐色で長さ1.3~1.8㎜、深いくぼみと白っぽい色の小さないぼがある。(参考4)。
【Flora of Chinaの解説】  1年草。根はひげ根で細く、直径0.3㎜未満で、無毛または綿毛がある。根茎は無い。茎は多数、拡散し、下部は匍匐し、単純または分枝し、高さ10~50㎝、無毛。葉はほぼすべて茎葉、ときに、1または2が根生する。葉鞘はほとんど10㎜未満、全体に粗毛があり、ときに、口部の隙間に沿った粗毛の線を除いて、無毛。葉身は線形または披針形、長さ2.5~10㎝×幅0.5~1㎝、無毛または両面にまばらに剛毛があり、先は鈍形または尖鋭形。扇状集散花序(cincinni)は数個が頂生の円錐花序につき、または単生し、数個の花が密につく。花序柄(peduncle)は細く、長さ4cmまで。下部の総苞片は葉状だが、葉よりも小さく、上部の総苞片は長さ10㎜未満である。苞は脱落性。花柄は細く、真っすぐで、長さ3~5㎜。萼片は卵状楕円形、長さ約3㎜。花弁は紫色、倒卵状円形。稔性の雄しべは2本。花糸は下部に毛がある。仮雄しべは2~4本。仮葯(antherodes)は3全裂。蒴果は卵状球径、3稜形、長さ3~4㎜。種子は各バルブに2個、黄褐色、深い穴、または浅い穴があり、放射状に白色の疣がある。花期および果期は(6~)8~9(~10)月。

5 Murdannia spirata (L.) Brückn. ハナイボクサ 花疣草
 中国、台湾、ブータン、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、スリランカ、ベトナム、 太平洋諸島(サモア)原産。中国名は矮水竹叶 ai shui zhu ye。福岡県で野生化している。
 多年草。根はひげ根。根茎は水平で、細長く、直径1~1.5㎜で、節に鞘をもち、節間は4㎝、黄色の粗毛が密に一列の線状に並ぶ。茎は細く、根茎と同幅、近下部は匍匐し、上部は斜上し、単純または分枝して、高さ35㎝以下になり、節間は長さ1.5~4.5 cm、一列の線に密に粗毛が並ぶ。葉鞘は長さ約5㎜、口部の隙間に沿って一列に密に粗毛がある。葉身は狭卵形~披針形、長さ1.5~3.5㎝×幅0.5~1㎝、両面が無毛、基部が切形、わずかに抱茎、縁が波打ち、先は鈍形または鋭形。扇状集散花序(cincinni)は1~4個、頂生の円錐花序を形成し、全体に無毛。花序柄は中間より上に不稔の膜質の総苞片をもつ。先の総苞片は鞘状、下部の1~2個の総苞片は形が葉に似ており、膜質、2個の扇状集散花序のみの場合、総苞片は普通、無く、1個の扇状集散花序のみの場合、扇状集散花序は糸状、長さ7㎝以下。苞は非常に小さい。花柄は長く、果時に7㎜以下になる。萼片は楕円形、長さ3~4㎜、宿存する。花弁は淡青色またはほぼ白色、倒卵状円形。稔性の雄しべは3本。花糸は羊毛で覆われる。仮雄しべは3本。仮葯(antherodes)は3全裂。蒴果は長円形、3稜形、長さ3~4㎜(短突起を除く)、両端が鈍形、先には短突起がある。種子は各バルブに3~7個、単列、灰白色、疣がある。花期は1~12月。2n=40。

参考

1) Flora of China
 Murdannia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=121330
2) Jepson eFlora: Taxon page
 Murdannia
http://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_display.php?tid=23256
3) Flora of China
 Murdannia
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=110810
4) 植物研究雑誌 Vol.90. No.3 215-217 (2015)
 中村 功:ツユクサ科イボクサ属の日本新産外来種アレチイボク
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_090_215_217.pdf