ハルガヤ 春茅

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Flora of Mikawa

イネ科 Poaceae ハルガヤ属

中国名 黄花茅 huang hua mao
英 名 sweet vernal grass
学 名 Anthoxanthum odoratum L.
ハルガヤの花序
ハルガヤの雄しべ
ハルガヤの雌しべ
ハルガヤの果期
ハルガヤの果実と護頴
ハルガヤの葉舌
ハルガヤ
ハルガヤ小穂
ハルガヤ小花
ハルガヤ葉表
ハルガヤ葉裏
花 期 4~7月
高 さ 20~50㎝
生活型 多年草
生育場所 草地、牧草地、空地、荒地
分 布 帰化種 ヨーロッパ、シベリア原産
撮 影 額田町 02.4.20
明治の初期に牧草として輸入されたものであり、乾燥するとクマリンの良い香りがする。
 茎は叢生して直立し、群生する。葉は両面に毛があり、長さ5~10㎝、幅3~6㎜。葉舌は長さ2~2.5㎜、鋭形。花序は長さ3~7㎝、穂状。小穂は長さ8~9㎜の線状披針形、小花3個からなる。第1苞頴は1脈、長さ4~5㎜、第2苞頴は3脈、長さ7~8㎜。小花の下側にある2個は退化して褐色の毛が密生する護頴となる。下から順に、第1小花(退化して不稔)の芒は短く、第2小花(退化して不稔)の芒は長い。第3小花は両性、雄しべ2個、護頴と内頴は無毛の膜質であり、芒はない。雄しべの葯は黄白色から紫色を帯びることもある。雄しべ先熟であり、雌しべの花柱の先は2裂し、葯が落ちた後も白色の長い花柱が残り目立つ。熟すと第1小花と第2小花の2個の護頴に包まれた第3小花の果実は褐色となって苞頴から離れて落ちる。果実は長さ1.4~1.7㎜、第3小花の護頴と内頴の薄膜に包まれている。2n=20
 葉身、苞頴には長い毛が生えることが多い。ただし、変異が多く、無毛のものもある。
 類似のヒメハルガヤは穂が約2㎝と小さく、茎が2~3に分枝し、葉身の毛はまばらで、苞頴は無毛。

ハルガヤ属

  family Poaceae - genus Anthoxanthum

 多年草。芳香がある。花序は開きまたは狭まる円錐花序。小穂は披針形~ふっくらとした楕円形または長円形、弱く側部が扁平、小花を3個もち、褐色、下側の2個の小花は雄性または不稔、頂生の小穂は両性、小軸は苞穎の上で間接離断するが、小花の間では離断しない。苞穎は宿存し、2個が不等長~ほぼ等長、披針形~卵形。第1苞穎は短く、1(~3)脈があり、第2苞穎は3(~5)脈があり、小穂の長さとほぼ同じ長さで、先は鋭形。下側の2個の小花はほぼ等長、内穎と3個の雄しべをもち、または不稔で内穎が無く、または両方の組み合わせになる。護穎は上第2苞穎と同長またはそれより短く、硬い膜状~革質、しばしば背中に褐色の直軟毛があり、縁に沿って縁毛があり、先は凹形~深く2裂して芒がなく、中間の上から短い真っ直ぐな芒があり、または基部近くから膝状に曲がる芒がある。両性の小花は2個の下側の小花と同長かまたはそれより短い。護穎は軟骨質、光沢があり、3~5脈があり、縁は巻きこみ内穎を被い、先は芒がなく、まれに微突形になる。内穎は1~3脈があり、竜骨はない。鱗被は無いかまたは2個。雄しべは2個。柱頭は羽毛状。x=5, 7。
 世界に約50種あり、両半球の温帯と寒冷地域に分布し、また熱帯の山々にも分布する。

ハルガヤ属の主な種と園芸品種

1 Anthoxanthum aristatum Boiss. ヒメハルガヤ 姫春茅
  synonym Anthoxanthum puelii Lecoq et Lamotte
 地中海沿岸地域(スペイン、ポルトガル、フランス、イタリア、アゾレス諸島、バレアレス諸島、カナリア諸島、コルシカ島、東エーゲ海諸島、サルデーニャ島、ブルガリア、アルバニア、ユーゴスラビア、北アフリカのモロッコ)原産。ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドに帰化している。英名はvernalgrass , annual varnalgrass。中湿性~乾燥し、開けた、攪乱地に生える。日本にも牧草に混入して入り、本州(千葉県、神奈川県、静岡県、岡山県、兵庫県)、四国(徳島県、愛媛県)、九州などで確認されている。
 一年草。稈は房状になり、高さ5~60㎝、クマリンの香りがあり、しばしば基部で膝状に曲がり、自由に分枝し、葉耳は長さ0.5㎜下、ときに欠く。葉舌は長さ1~2(3)㎜、鈍形~鋭形。葉身は長さ0.8~6㎝×幅1~5㎜。円錐花序は長さ1~4㎝、最下の枝は長さ8~12(15)㎜。小梗は長さ0.1~0.3㎜、毛がある。小穂は長さ(4)5~9 ㎜。第1苞穎は長さ3~5㎜。第2苞穎は長さ5~7㎜。不稔の小花は長さ約3㎜、1番目の小花の芒は長さ3.5~5㎜。2番目の小花の芒は長さ6~10㎜、第2苞穎を2~3mm超える。稔性の小花は長さ約2㎜。葯は2個、長さ2.8~4.1㎜。2n=10, 20。花期は4~5月。

2 Anthoxanthum horsfieldii (Kunth ex Benn.) Mez ex Reeder タイワンハルガヤ 台湾春茅
  synonym Anthoxanthum japonicum (Maxim.) Hack. ex Matsum.
  synonym Anthoxanthum japonicum (Maxim.) Hack. ex Matsum. var. sikokianum (Ohwi) Ohwi ex Masam.
  synonym Anthoxanthum japonicum (Maxim.) Hack. ex Matsum. subsp. luzoniense auct. non (Merr.) T. Koyama
  synonym Anthoxanthum horsfieldii (Kunth ex Benn.) Mez ex Reeder var. formosanum (Honda) Veldkamp
  synonym Anthoxanthum formosanum Honda
  synonym Anthoxanthum japonicum (Maxim.) Hack. ex Matsum. var. luzoniense sensu T.Koyama
 中国、台湾、アッサム、ミャンマー、タイ、フィリピン、インドネシア(ジャワ島、スラウェシ島、スマトラ島、モルッカ諸島)、ニューギニア原産。中国名は台湾黄花茅 tai wan huang hua mao。山地、草地に生える。
 YListでは日本原産のタカネコウボウをAnthoxanthum horsfieldiiの変種とし、タイワンハルガヤはvar. formosanumとしている。
 多年草、緩く房状になり、短い根茎がある。稈は高さ10~60㎝、3~5節がある。葉鞘は無毛またはまばらに直軟毛がある。葉身は緩く内巻き、長さ6~13㎝×幅2~5㎜、無毛または上面に毛がある。葉舌は長さ2~4㎜、切形。円錐花序は狭く、狭まり、長さ2.5~7㎝。枝は長さ5㎝以下。小梗は毛がある。小穂は披針状長円形、長さ4.3~5.5㎜。両苞穎は等しくなく、無毛。第1苞穎は第2苞穎の長さの2/3~3/4の長さ、1脈がある。第2苞穎は小穂と同長、3脈がある。下側の小花は不稔で、護穎だけからなり、長さ約4㎜、背に直軟毛があり、先は2裂、裂片は鈍形。1番目の護穎は中間の上から芒が出て、芒は真っすぐ、長さ0.8~1.5㎜。 2番目の護穎は芒が下部1/4~1/3から出て、芒は膝状に曲がり、長さ4.5~6㎜。両性の小花は長さ2.5~3㎜、平滑、光沢がある。葯は長さ1.5~2㎜。花期は10月

3 Anthoxanthum japonicum (Maxim.) Hack. ex Matsumura  タカネコウボウ 高嶺香茅
  synonym Anthoxanthum horsfieldii (Kunth ex Benn.) Mez ex Reeder var. japonicum (Maxim.) Veldkamp
  synonym Anthoxanthum sikokianum Ohwi
  synonym Hierochloe japonica Maxim.
 日本固有種。本州、四国、九州に分布する。別名はイシヅチコウボウ。高山帯の草原に生える。
 多年草。叢生し、緩く房状になる。根茎は短い。稈は細く、長さ26~65cm、直径1~1.2 mm、3~5節があり、上部の節間は無毛、側枝は無い。葉鞘は隣接する節間より長く、表面は無毛。葉舌は縁毛がなく、膜質、長さ2~6㎜、切形または鈍形、または鋭形。葉身は線形または披針形、長さ12~20cm×幅4~10mm、芳香があり、表面は平滑、まばらに毛があり、上面には毛がある。花序は円錐花序。円錐花序は開き、卵形、緩く、長さ5~10cm×幅1~3.5cm。一次の花序枝は2本つき、長さ1~3cm、平滑。小穂は単生。稔性の小穂は小梗がある。小穂は基部に2個の不稔の小花と、1個の稔性の小花をもち、小軸の伸びた突起は無い。小穂は楕円形または長円形、側部がわずかに扁平、長さ5~7 mm、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節離断する。小軸の節間は下部の稔性の小花の下に0.7~1mm伸びる。苞穎は宿存し、2個は長さが異なり、小花の先を超え、稔性の護穎よりも薄い。第1苞穎は卵形、長さ3~4㎜、第2苞穎の長さの0.66倍、膜質、1竜骨、1脈があり、側脈はなく、先は尖鋭形。第2苞穎は披針形、長さ5~7㎜、隣接する稔性の護穎の長さの2倍の長さで、膜質、1竜骨、3脈があり、先は鋭形。基部の不稔の小花は2個の長さが異なり、不毛、有意な内穎は無く、稔性の小花と一緒に脱落する。下側の不稔の小花の護穎は長円形、長さ5~7㎜、紙質、竜骨はなく、5脈があり、直軟毛があり、先は2歯があり、鈍形、芒がある。芒は背側につき、護穎の背の0.5上から出て、長さ1.5~2㎜。上側の不稔の小花の護穎は長円、長さ5~7 mm、紙質、直軟毛があり、先は2歯があり、鈍形、芒がある。芒は背の0.25上から出て、膝状に曲がり、長さ4~5㎜。稔性の護穎は楕円形または卵形、長さ2.5~3㎜、軟骨質、竜骨はなく、5脈があり、側脈は不明瞭、縁は内巻き、内穎のほとんどを被い、先は凹形。内穎は長円形、1脈があり、竜骨は無い。鱗被は無い。葯は2個、長さ2~2.5㎜。柱頭は2個、 雌性先熟(protogynous)、毛がある。穎果は果皮が付着性。へそは点状。花期は6~7月。

4 Anthoxanthum monticola (Bigel.) Veldkamp  ミヤマコウボウ 深山香茅 広義
 日本(北海道、本州中部以北)、韓国、中国、モンゴル、ロシア、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名高山茅香 gao shan mao xiang。英名はalpine sweetgrass 。別名はワシベツミヤマコウボウ。高山の草原に生える。
 多年草。 密~緩く、叢生する。根茎は長さ2㎝以下、まれに長く、直径約2㎜。稈は高さ(10)20~55(75)cm、2~3節がある。葉鞘は平滑、無毛、褐色~濃紫色、節間より長く、上部はわずかに膨らむ。葉舌は長さ0.2~1.5(2)㎜、半透明、縁毛がある。葉身は長さ1~12()cm×幅(0.7)1~3(5) mm、平らまたは折りたたまれ、向背軸の表面は光沢があり、光沢があり、向背軸の表面はまばらにかさぶたまたは毛羽立っています。円錐花序は長さ1~8.5cm×幅1.2~2cm、(3)10~20(35)個の小穂がつく。 小穂は長さ5~8㎜、黄褐色、小軸の節間は長さ約0.1mm、無毛。両苞穎はほぼ同長、長さ4.8~6.7㎜、護穎の長さとほぼ同長。第1苞穎は1~3脈。第2苞穎は3~5脈。 最下の2個の小花は雄性。護穎は長さ4~6.5(8)㎜、中程度に毛があり、毛は長さ1㎜以下、先は2深裂する。1番目の護穎の芒は長さ0.6~4(6.5)㎜。2番目の護穎の芒は長さ4.5~10.5㎜、普通、膝状に曲がり、基部近く~中間近くから出る。両性の護穎は長さ3.5~5.2㎜、2裂する先に向かって毛がある。葯は長さ1.5~2.7㎜。2n=56, 58, 63, 66, 72, 74–78。花期および果期は7~8月。(Flora of North America , Flora of China)
 Kewscienceでは亜種を認めていないが、YLkist,Flora of North Americaでは亜種に分類している。
4-1 Anthoxanthum monticola subsp. monticola
  synonym Hierochloe orthantha T.J.Sørensen
  synonym Hierochloe alpina subsp. orthantha (T.J.Sørensen) G.Weim.
  synonym Anthoxanthum monticola subsp. orthanthum (T.J.Sørensen) G.C.Tucker
 subsp. alpinumより湿った場所に生える。
 上側の雄性の小花の芒は長さ4.5~7㎜、護穎の中間または上に取り付けられ、真っすぐまたは弱く膝状に曲がり、下部は捻じれ、1(2)回巻く。2n=56, 58, 63。
4-2 Anthoxanthum monticola (Bigel.) Veldkamp subsp. alpinum (Sw. ex Willd.) Soreng ミヤマコウボウ 
  synonym Hierochloe alpina (Sw.) Roem. & Schult.
 極地に近い地域に分布する。冬に強い風にさらされ、ほとんど雪に覆われない場所に生える。別名はワシベツミヤマコウボウ。
 上側の雄性の小花の芒は基部近く~中間に取り付けられ、普通、強く膝状に曲がり、下部は捻じれ、(1)2~4回巻く。2n=56, 66, 72。
4-2-1 Anthoxanthum monticola (Bigel.) Veldkamp subsp. alpinum (Sw.) Soreng f. monstruosum (Koidz.) Yonek. オオミヤマコウボウ 

5 Anthoxanthum nitens (Weber) Y.Schouten et Veldkamp セイヨウコウボウ 西洋香茅 
Anthoxanthum nitens (Weber) Y.Schouten et Veldkamp var. nitens  韓国、中国、モンゴル、ロシアアフガニスタン、キルギスタン、南西アジア(コーカサス)、ヨーロッパ、北アメリカ原産。中国名は茅香 mao xiang。英名はsweet grass , holygrass。別名はセイヨウコウボウ、ヨウシュコウボウ、スイートグラス。山の斜面、氾濫原、湿った草地に生える。芝生種子などに混入して渡来し、日本にも帰化している。
 多年草、根茎は細く、這う。稈は高さ20~60㎝、3~4節がある。葉鞘は節間よりも長く、無毛または±毛がある。根生葉の葉身は長さ30㎝以下×幅3~10㎜、稈の葉ははるかに短く、無毛または上面に微軟毛があり、縁はザラつき、先は尖鋭形。葉舌は長さ2~5㎜、鈍形。 円錐花序はピラミッド形、緩く、長さ4~10㎝。枝は広がり、平滑、下半分が裸出する。小穂は丸みのある楕円形、長さ3.5~6㎜、薄褐色、光沢がある。両苞穎はほぼ等しく、小穂の長さと同長、1~3脈がある。雄性小花のカルスは硬い毛があり(または東アジアでは無毛)。下側の小花は雄性、護穎は苞穎よりわずかに短く、背の中間より上微軟毛があり、縁は短い縁毛があり、先は鋭形または微細な微突形。両性の小花は長さ約3.5㎜、先に伏した毛がある。内穎は1脈がある。葯は長さ約2.5㎜。花期および果期は6~9月。

6 Anthoxanthum glabrum (Trin.) Veldkamp コウボウ 香茅
  synonym Hierochloe odorata(L.)P. Beauv. var. pubescens Krylov
  synonym Anthoxanthum nitens (Weber) Y.Schouten et Veldkamp var. glabrum (Trin.) Yonek.  ヒメコウボウ 
  synonym Anthoxanthum nitens var. glabrum (Trin.) Yonek.
  synonym Anthoxanthum nitens var. sachalinense (Printz) Yonek.
  synonym Hierochloe glabra subsp. sachalinensis (Printz) Tzvelev
 日本(北海道、本州、四国、九州)、韓国、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン原産。中国名は光稃香草 guang fu xiang cao。別名はヒメコウボウ。山地の斜面の湿った草地に生える。
 多年草、叢生し、緩く房状になる。根茎は細長く、横に這う。稈は長さ10~35(50)㎝、2~3節がある。葉鞘は節間より長く、毛がある。葉舌は長さ2~5㎜、鈍形、縁毛がなく、膜質。葉身は長さ(2)3~9cm×幅2~3 mm、芳香があり、先は急な鋭形。花序は円錐花序。円錐花序は開き、長円形またはピラミッド形、長さ3~5(6)㎝。小穂は単生。稔性の小穂は小梗がある。小穂は2個の不稔の小花と中央に1個の稔性の小花をもつ。小軸の延びた突起は無い。小穂は楕円形、側部が扁平、長さ2.5~4(~4.5)㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節分断する。小花のカルスは無毛。苞穎は宿存し、2個が似ており、小花の先に達し(小穂よりわずかに短く)、稔性の護穎よりも薄く、光沢がある。第1苞穎は卵形、長さ2.5~3㎜、第2苞穎の長さと同長、透明、1竜骨、1脈があり、側脈は無く、先は鋭形。第2苞穎は卵形、長さ2.5~3㎜、隣接する稔性の護穎の長さの1.1~1.2倍、透明、1竜骨、1(~3)脈があり、側脈はなく、先は鈍形。基部の不稔の小花は似ていて、雄性、内穎をもち、稔性の小花につき、一緒に落ちる。下側の不稔の小花の護穎は長円形、稔性の護穎の長さと同じで、革質、暗褐色、1竜骨、5脈があり、パピラがあり、縁に縁毛があり、鈍形、芒は無い。上側の不稔の小花の護穎は長円形、下側の不稔の小花の長さの0.9倍、革質、ザラつき、縁に縁毛があり、先は2歯があり、鈍形、芒はない。稔性(両性の小花の)の護穎は卵形、長さ2~2.5㎜、膜質、暗褐色、竜骨は無く、5脈があり、表面は微軟毛があり、上部に毛があり、縁は内巻き、内穎をほとんど被い、先は鋭形。内穎は1脈があり、竜骨はない。葯は2個(両性)または3個(雄性)、長さ1.7~2㎜。子房は無毛。穎果は果皮が付着性。花期および果期は6~9月(日本では花期は4~6月)

7 Anthoxanthum nipponicum Honda ミヤマハルガヤ 深山春茅
  synonym Anthoxanthum odoratum subsp. alpinum (á. Löve & D. Löve) Tzvelev,   synonym Anthoxanthum odoratum L. subsp. nipponicum (Honda) Tzvelev  ミヤマハルガヤ 
  synonym Anthoxanthum odoratum L. var. furumii (Honda) Ohwi ex W.T.Lee
  synonym Anthoxanthum odoratum L. var. nipponicum (Honda) Y.H.Sun et P.C.Kuo
  synonym Anthoxanthum odoratum L. subsp. furumii (Honda) T.Koyama
  synonym Anthoxanthum nipponicum Honda var. furumii Honda
  synonym Anthoxanthum alpinum Á. Löve & D. Löve  日本(北海道中部、利尻島、本州の赤石山脈)、朝鮮、中国、ヨーロッパ原産。中国名は日本黄花茅 ri ben huang hua mao。高山の草原に生える  ハルガヤは4倍体(2n=20)であり、ハルガヤと A.alpinumとは核型において明確に異なり、ハルガヤを A.alpinumの同質 4倍体とみなすことはできないとされている。ミヤマハルガヤと A.alpinumは同一種として扱われるべきといわれている。  短命な多年草で、高さは20~50㎝。葉身は常に無毛。円錐花序は長さ2~3㎝。小梗は無毛。小穂は苞穎が無毛。退化小花の護穎以外が全く無毛である。花期および果期は6月~8月。2n=10。

8 Anthoxanthum odoratum L. ハルガヤ 春茅
 ヨーロッパ、シベリア原産。中国名は黄花茅 huang hua mao。英名はsweet vernal grass。別名はスイート・バーナルグラス。明治の初期に牧草として輸入されたものであり、ほぼ日本全体に帰化している。乾燥するとクマリンの良い香りがする。草地、牧草地、空地、荒地に生える。
多年草。高さ20~50㎝。茎は叢生して直立し、群生する。葉は両面に毛があり、長さ5~10㎝、幅3~6㎜。葉舌は長さ2~2.5㎜、鋭形。花序は長さ3~7㎝、穂状。小穂は長さ8~9㎜の線状披針形、小花3個からなる。第1苞頴は1脈、長さ4~5㎜、第2苞頴は3脈、長さ7~8㎜。小花の下側にある2個は退化して褐色の毛が密生する護頴となる。下から順に、第1小花(退化して不稔)の芒は短く、第2小花(退化して不稔)の芒は長い。第3小花は両性、雄しべ2個、護頴と内頴は無毛の膜質であり、芒はない。雄しべの葯は黄白色から紫色を帯びることもある。雄しべ先熟であり、雌しべの花柱の先は2裂し、葯が落ちた後も白色の長い花柱が残り目立つ。熟すと第1小花と第2小花の2個の護頴に包まれた第3小花の果実は褐色となって苞頴から離れて落ちる。果実は長さ1.4~1.7㎜、第3小花の護頴と内頴の薄膜に包まれている。2n=20。花期は4~7月。
8-1 Anthoxanthum odoratum L. subsp. odoratum ハルガヤ 春茅
8-2 Anthoxanthum odoratum L. subsp. glabrescens (Celak.) Asch. et Graebn. ケナシハルガヤ 
  synonym Anthoxanthum odoratum L. var. alpinum Uechtr.
  synonym Anthoxanthum odoratum L. subsp. alpinum (A. et D.Löve) B.M.G.Jones et Melderis
 別名はメハルガヤ。亜種とは認められていない。無毛の一型とされている。

9 Anthoxanthum pluriflorum (Koidz.) Veldkamp エゾコウボウ 蝦夷香茅 広義
 日本固有種。北海道に分布する。高山の蛇紋岩地に生える。
 多年草。根茎は長く伸びる。稈は単生、長さ18~40cm、直径1~1.2mm。葉舌は繊毛があり、膜質。葉身は内巻き、長さ25~40cm×幅4~6mm。花序は円錐花序。円錐花序は開き、長円形、長さ2~3cm×幅1~1.5cm。小穂は単生。稔性の小穂は小梗がある。小穂は基部に2個の不稔の小花をもち、1個の稔性の小花をもち、小軸の延びた突起は無い。小穂は卵形、側部が扁平、長さ5~6 mm、熟すと別れ、各稔性の小花の下で関節分断する。両苞穎は宿存性、似ており、小花の先に達し、稔性の護穎よりも薄く、光沢がある。第1苞穎は卵形、長さ5~6 mm、第2苞穎の長さと同長、膜質、1竜骨があり、3脈があり、先は鈍形。第2苞穎は卵形、長さ5~6 mm、隣接する稔性の護穎の長さの1.2倍、膜質、1竜骨、3脈があり、先は鈍形。基部の不稔の2個の小花は似ており、雄性、内穎をもち、稔性の小花と一緒に落ちる。下側の不稔の小花の護穎は楕円形、長さ4.5~5.5 mm、紙質、1竜骨、5脈があり、毛があり、縁に縁毛があり、先は鈍形、芒は無くまたは微突形、または芒がある(エゾヤマコウボウ)。稔性の護穎は卵形、長さ4~5㎜、軟骨質、竜骨は無く、表面の基部に毛があり、縁は内巻き、内穎のほとんどを被い、先は鋭形。内穎は楕円毛、1脈があり、竜骨は無い。葯は2個(両性)または3個(雄性)。子房は無毛。穎果は果皮が付着性。
9-1 Anthoxanthum pluriflorum (Koidz.) Veldkamp var. pluriflorum エゾコウボウ 
 葉舌は長さ2~4㎜、3角形、縁毛がある。花序は小穂が10~18個つく。護穎は芒がない。

9-2 Anthoxanthum pluriflorum (Koidz.) Veldkamp var. intermedium (Hack.) Yonek. エゾヤマコウボウ 蝦夷山香茅
 北海道に分布する。別名はエゾミヤマコウボウ
 葉舌は長さ1.5~2mm、切形。花序は小穂が12~25個つく。護穎には芒があり、芒は長さ約4mm、真っすぐ。

参考

1) Flora of China
 Anthoxanthum
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=102065
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Anthoxanthum
https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:17483-1
3) World Flora Online
 Anthoxanthum
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000002465
4) World Checklist of Vascular Plants
 Anthoxanthum
https://wcvp.science.kew.org/
5) FNA - Flora of North America
 Anthoxanthum
http://floranorthamerica.org/Anthoxanthum
6) Jepson eFlora: Taxon page
 Anthoxanthum odoratum
https://ucjeps.berkeley.edu/eflora/eflora_display.php?tid=13517
7) Flora of Victoria
 Anthoxanthum
https://vicflora.rbg.vic.gov.au/flora/taxon/d8477e0f-da25-4ec3-b0aa-aa5f0516955b
8) Journ. Jap. Bot. Vol. 41 No. 3 85-88 1966
 館岡亜緒:ミヤマハルガヤについて
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_041_85-88.pdf