アリノトウグサ 蟻の塔草

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Flora of Mikawa

アリノトウグサ科 Haloragaceae アリノトウグサ属

中国名

小二仙草 xiao er xian cao

英 名

creeping raspwort

学 名 Gonocarpus micranthus Thunb.
Haloragis micrantha (Thunb.) R. Br. ex Siebold et Zucc.
アリノトウグサの蕾
アリノトウグサの蕾2
アリノトウグサの花
アリノトウグサの雌性期の花
アリノトウグサの果実
アリノトウグサの茎
アリノトウグサ
アリノトウグサ蕾の内部
アリノトウグサ
花 期 7~9月
高 さ 5~15(45)㎝
生活型 多年草
生育場所 日当たりのよい湿地
分 布 在来種 日本全土、朝鮮、中国、インド、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド
撮 影 葦毛湿原  03.7.20
和名は小さな花が草を登っている蟻のように見えることから。
 茎は四稜形(断面が四角)、赤色を帯びることも多く、平滑、根元は地を這って広がり、よく分枝して斜上する。葉は対生し、長さ6~17㎜、幅4~10㎜の卵形、基部は円形~心形、縁は厚く、6~20個の鈍鋸歯がある。葉柄は長さ0.5~2㎜。花は蟻のように小さく、茎に並んでつき、横向きから下向きに咲く。花柄は長さ0.1~0.3㎜。花弁は4個、長さ0.8~1.2㎜、紫褐色。萼は4裂し、萼筒は直径約1㎜の球形。萼裂片は長さ約0.5㎜、4個の逆向きのハートが並んだように見える。雄しべは8個、長さ約1㎜。花は雄しべ先熟。雄性期には花弁が反りかえり、垂れ下がった葯から黄色い花粉を出す。花弁と雄しべを落とし、雌しべを伸ばすと雌性期に入る。雌性期には柱頭の先が淡紅色~紅色の羽毛状になる。核果は長さ0.9~1㎜、幅0.8~1.1㎜、ほぼ球形、8本の筋があり、核は1個入る。2n=12<

アリノトウグサ属

  family Haloragaceae - genus Gonocarpus

 地上生の草本、1年草、多年草、又は亜低木、平伏又は直立。茎は平滑または4うねがあり、無毛~ザラつき~まばらに軟毛がある。葉は十字対生又は互生、まれに3(~5)輪生、有柄又は無柄、単葉、縁は鋸歯縁又は全縁、羽状脈。花序は花が下から上に向かって咲く穂状花序(indeterminate spike)、花は互生、対生又は輪生の1次の苞腋につき、上部の葉腋に側穂状花序をもつ。花は両性、(3 又は)4数性。咢片は三角形、しばしば中肋と中央の基部にカルス(callus)をもち、果時に宿存する。花弁はフードがあり、竜骨があり、普通、短い爪部があり、早落性。雄しべは普通、咢片の数の2倍つく。花糸は短い。葯は長円形、4室、咢の前につく葯(antisepalous)は花弁の前につく葯(antipetalous)よりわずかに長い。子房は不完全な (3又は)4室、室に1個、下垂胚珠をもち (もし、2個なら1個は早く腐熟になる)、(6~)8うねがあり、装飾され、中央の咢片に似たうねは他より隆起が不明瞭。花柱は咢片と同数。柱頭は頭状。果実は小さく、堅果状、1室 (隔壁はほとんどが無い)。果皮はときに膜質。種子は1個、果実全体を占める。
 世界に約41種があり、熱帯~亜熱帯の東アジア、東南アジア、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋諸島に分布する。

 ※アリノトウグサ属は日本ではHaloragisとされてきたが、アリノトウグサは学名がGonocarpus micranthus とされるようになったため、最近ではGonocarpusをアリノトウグサ属と呼び、 Haloragisはハロラギス属と呼ばれるようになった。ハロラギス属はオーストラリア、ニュージーランドに分布し、世界に約30種がある。

アリノトウグサ属の主な種と園芸品種

1 Gonocarpus chinensis (Lour.) Orchard  ナガバアリノトウグサ 長葉蟻の塔草
  synonym Haloragis chinensis (Lour.) Merr. (1935).
 中国、ベトナム、シンガポール、インドネシア、マレーシア(サバ州)、フィリピン、パプアニューギニア、 南西アジア(西イラン)、オーストラリア、太平洋諸島(カロライン諸島、ハワイに帰化)原産。中国名は黄花小二仙草 huang hua xiao er xian cao 。沖縄に帰化。開いた草原に生える。
 多年草、直立又は斜上、高さ10~60㎝。茎は弱く、4うねがあり、ザラつき、まばらに伏毛がある。葉は十字対生、花序近くで互生になり、無柄又はほぼ無柄。葉身は線状披針形、長円形、又は線形、長さ10~28㎜×幅1~9㎜、表面はザラつき、基部は円形、縁は厚くなり、15~30個の小歯をもつ鋸歯縁、先は鈍形。花序は花が下から上に向かって咲く穂状花序(indeterminate spike)、分枝する。苞は葉状、披針形~狭卵形、長さ0.5~1.5㎜×幅0.3~0.5㎜、内側は軟毛があり、縁は厚くなり、全縁。小苞は褐色、線形~披針形、長さ0.2~0.5㎜、膜質。花は直立~開出、4数性。花柄は長さ約0.2㎜。咢片は緑色、三角形、長さ0.6~0.9㎜×幅0.4~0.5㎜、無毛、中央の基部に小さなカルス(callus)をもち、縁は厚くなる。花弁は黄色、ときに赤色を帯び、フードがあり、ごく短い爪部があり、長さ1~1.5㎜×幅0.3~0.5㎜、竜骨の上にまばらに粗毛がある。雄しべは8本、長さ約1㎜。子房は4室。花柱はこん棒形、長さ 0.1~0.3㎜。柱頭は帯赤色、頭状、長毛縁。果実は銀灰色~暗灰色、広楕円形、長さ0.7~1㎜×幅0.8~1㎜、弱い4角(かど) 又は8うねがあり、うねの間に2個以下の斜めのカルス(calluses)をもち、ザラつき、ほとんど全体~うねに短い曲がった伏毛をもつ。種子は果実に1個。花期は3~10月。果期は5~11月。

2 Gonocarpus micranthus Thunb.  アリノトウグサ 蟻の塔草
  synonym Haloragis micrantha (Thunb.) R. Br. ex Siebold et Zucc.
 日本全土、韓国、中国、台湾、インド(アッサム、シッキム)、ブータン、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア、パプアニューギニア、フィリピン、オーストラリア、太平洋諸島(ニュージーランド)原産。中国名は小二仙草 xiao er xian cao。英名はcreeping raspwort。日当たりのよい湿地に生える。
 多年草。高さ5~15(45)㎝。茎は四稜形(断面が四角)、赤色を帯びることも多く、平滑、根元は地を這って広がり、よく分枝して斜上する。葉は対生し、長さ6~17㎜、幅4~10㎜の卵形、基部は円形~心形、縁は厚く、6~20個の鈍鋸歯がある。葉柄は長さ0.5~2㎜。花は蟻のように小さく、茎に並んでつき、横向きから下向きに咲く。花柄は長さ0.1~0.3㎜。花弁は4個、長さ0.8~1.2㎜、紫褐色。萼は4裂し、萼筒は直径約1㎜の球形。萼裂片は長さ約0.5㎜、4個の逆向きのハートが並んだように見える。雄しべは8個、長さ約1㎜。花は雄しべ先熟。雄性期には花弁が反りかえり、垂れ下がった葯から黄色い花粉を出す。花弁と雄しべを落とし、雌しべを伸ばすと雌性期に入る。雌性期には柱頭の先が淡紅色~紅色の羽毛状になる。核果は長さ0.9~1㎜、幅0.8~1.1㎜、ほぼ球形、8本の筋があり、核は1個入る。2n=12。花期は7~9月。

参考

1) Flora of China
 Gonocarpus
 http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=113899
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Gonocarpus
  http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:19526-1
 Haloragis  
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:19529-1
3)Flora of Victoria
 Haloragis  
https://vicflora.rbg.vic.gov.au/flora/taxon/f7767072-a36f-4ca7-97bd-97b2ae82b52a
4)植物研究雑誌 16(5): 273-285(1940)
 津山尚 : アリノトウグサ属の概観とミクロネシア産の同属植物
5)PlantMET NEW SOUTH WALES FLORA ONLINE
 Gonocarpus  
http://plantnet.rbgsyd.nsw.gov.au/cgi-bin/NSWfl.pl?page=nswfl&lvl=gn&name=Gonocarpus