アリドオシラン 蟻通蘭

mark

Flora of Mikawa

ラン科 Orchidaceae イナバラン属

中国名 日本全唇兰 ri ben quan chun lan
学 名 Odontochilus japonicus (Rchb.f.) T.Yukawa
 synonym Myrmechis japonica (Reichb. f.) Rolfe
アリドオシランの花
アリドオシランの茎
アリドオシランの葉
アリドオシラン
花 期 6~7月
高 さ 5~10㎝
生活型 多年草
生育場所 落葉樹林内
分 布 在来種 北海道、本州(中部地方以北)、朝鮮、中国
撮 影 志賀高原 05.8.1
樹林内の日陰に生える小さな蘭。茎は地を這い、立ち上がって花をつける。葉は互生し、長さ5~8㎜、幅5~7㎜の三角状卵形。葉の基部は柄状になり、葉鞘は長さ4~5㎜。花は長さ5~9㎜、白くて目立ち、基部が丸く、唇弁の先が2裂してやや開く。2n=56

イナバラン属

  family Orchidaceae - genus Odontochilus

 草本、地上生、独立栄養(autotrophic)まれに全菌共生栄養(holomycotrophic)。根茎は匍匐し、円筒形、数個の節があり、肉質。根は細く、糸状~繊維状、根茎の節から1本でるか又はまれに欠く。茎は直立又斜上、基部に1個~数個の緩い鞘をもち、葉が少数、散生又は類ロゼット状になるか又はまれに欠き(全菌共生栄養のときに)、無毛。葉は緑色又は紫色、たまに、1~3本の白色の筋があり、類円形、卵状披針形、又は楕円形、斜めで、短い~長い葉柄状の基部が広がり、筒状の抱茎の鞘になる。花序は直立、頂生の総状花序、無毛又は有毛。花序柄は少数の鞘状の苞を散生する。花序軸は疎~やや密に少数~多数の花をつける。花の苞は膜質、無毛又は有毛。花は下向き又は直立して下向きにならない。子房は捻じれ又は捻じれず、細く、無毛又は有毛。咢片は、無毛又は有毛。背側の咢片は分離又は側咢片とその長さの半分が合着する。側咢片は背咢片に似て、唇弁の基部を完全に包む。花弁は背咢片に普通、密着し、線状舌形~卵形、膜質。唇弁は3深裂し、距は無い。下唇(hypochile)はほぼ球形、無隔壁で袋があり、又は中央に隔壁があって2袋状、肉質のカルス(calli:上面の肉質の塊)を含む。中央唇(mesochile:唇弁の中央部分)は普通、長く、筒状、外側の縁は全縁又は長毛縁の櫛状のフランジをもち、まれに両側に2フランジをもち、あるいはまれに全くフランジが無い。ずい柱(column)は広がり、捻じれ又は捻じれず、腹側の縁に2個の薄板状の付属体(翼)がある。葯は直立、卵形、2室。花粉塊(pollinia)は2個、倒卵状倒洋なし形又はこん棒形、普通、細くなり、細い柄が1個の小さな 粘着体(viscidium)につく。嘴状体(rostellum:3裂する柱頭の中央の裂片の変化したもの)はデルタ形、残りは短く~深く2裂する。柱頭の裂片は離れるか合流し、嘴状体の真下になる。蒴果は楕円形。
 世界に約40(57)種があり、インド北部、ヒマラヤ、東南アジア、北部の日本、東部の南西太平洋諸島に分布する。

イナバラン属の主な種と園芸品種

1 Odontochilus brevistylus Hook.f. 
  synonym Odontochilus purpureus C.S.Leou
  synonym Odontochilus candidus T.P.Lin et C.C.Hsu
 中国、マレーシア、タイ、ベトナム原産。中国名は短柱齿唇兰 duan zhu chi chun lan。
1-1 Odontochilus brevistylus Hook.f. var. candidus (T.P.Lin et C.C.Hsu) T.P.Lin   狭義

2 Odontochilus drymoglossifolius (Hayata) T.Yukawa  アリサンアリドオシラン 
 台湾原産。中国名は白花金唇蘭。
3 Odontochilus elwesii C.B.Clarke ex Hook.f. 
  synonym Odontochilus purpureus C.S.Leou
  synonym Odontochilus candidus T.P.Lin et C.C.Hsu
 中国、ブータン、インド、ミャンマー、タイ、ベトナム原産。中国名は西南齿唇兰 xi nan chi chun lan。
 花の苞は長さ約5mm、子房よりかなり短い。子房と花柄は有毛。

4 Odontochilus fissus (F.Maek.) T.Yukawa  オオハクウンラン 大白雲蘭
  synonym Kuhlhasseltia fissa (F.Maek.) T.Yukawa
 伊豆諸島に分布する。ハクウンラン(Kuhlhasseltia nakaiana)に含める見解もあるが、全体に大型。Kewsienseには掲載されていない。
 葉は長さ9~13mm。花は1~7個つく。側萼片は長さ5~6mm。唇弁は先が2浅裂し、裂片は四角形。

5 Odontochilus hatusimanus Ohwi et T.Koyama  ハツシマラン 初島蘭
 日本固有種(九州の福岡県、鹿児島県)。
 多年草、高さ10~15㎝。葉は互生し、基部に集まって4~7個つく。花は3~7個つく。茎や萼に細かい毛がある。唇弁は白色、先が2裂し、裂片は円形に近く、前に垂れて接する。花期は7~8月。

6 Odontochilus japonicus (Rchb.f.) T.Yukawa  アリドオシラン 蟻通蘭
  synonym Myrmechis japonica (Reichb. f.) Rolfe
 日本(北海道、本州の中部地方以北)、朝鮮、中国原産。樹林内の日陰に生える
 多年草。高さ5~10㎝の小さな蘭。茎は地を這い、立ち上がって花をつける。葉は互生し、長さ5~8㎜、幅5~7㎜の三角状卵形。葉の基部は柄状になり、葉鞘は長さ4~5㎜。花は長さ5~9㎜、白くて目立ち、基部が丸く、唇弁の先が2裂してやや開く。花期は6~7月。2n=56。

7 Odontochilus lanceolatus (Lindl.) Blume  タイワンシュスラン 
  synonym Odontochilus bisaccatus (Hayata) Hayata ex Schltr.
 中国、台湾、ブータン、インドネパール、ミャンマータイ、ベトナム原産。中国名は齿唇兰 chi chun lan。
 葉は上面が暗緑色、中脈と2本の側脈に沿って帯白色の縞がある。花は黄色、側咢片は長さ6~7.5mm。

8 Odontochilus nakaianus (F.Maek.) T.Yukawa  ハクウンラン  白雲蘭
  synonym Kuhlhasseltia nakaiana (F.Maek.) Ormerod
 日本(本州、九州)、朝鮮、台湾原産。別名はムライラン、イセラン。林内に生える。
 多年草、茎は下部が匍匐し、上部で斜上~直立し、高さ5~13㎝、根は退化して無い。葉は茎の下部に数個がまばらに互生し、葉柄があり、柄の基部は茎を抱く。葉身は濃緑色、卵状円形、長さ3~7mm×幅2.5~7mm。茎頂の総状花序に花を1~7個つける。花序や苞、萼片に細かい軟毛がある。側萼片は長さ4.5~5mm、背萼片より長く、3萼片の基部が合着して膨れ、唇弁の基部を包む。側花弁は背萼片に密着し、普通、目立たない。3萼片と側花弁は淡緑色、ときに赤色を帯びる。唇弁は先が2浅裂し、裂片は四角形、萼片より長く、爪部は細く、基部が2個の半球状の距となり、2本の細長い肉質突起がある。花期は7~8月。

9 Odontochilus nanlingensis (L.P.Siu et K.Y.Lang) Ormerod  ヒメシラヒゲラン 姫白髭蘭
 日本(鹿児島県、南西諸島)、台湾、中国南部原産。中国名は南岭齿唇兰 nan ling chi chun lan。KewsienseやFlora of Chinaでは日本を分布域に含めていない。花は白色で赤紫色の斑紋(ブロッチ)があり、唇弁の中央から基部にかけての細い部分の両側に櫛状の突起があり、先は2裂してY字形になる。
 独立栄養(autotrophic)植物。高さ7.5~8.5㎝。茎は斜上し、緑褐色、直径1~1.5mm、葉は3~5枚。葉は下面が紫色、上面は濃緑色、卵形、長さ0.6~0.8㎝×幅0.4~0.6㎝、先は鋭形、基部は葉柄状で筒状の鞘は長さ0.3~0.5㎝。花序柄は長さ3~4㎝、2個の鞘状の苞をもち、絨毛がある。花序軸は長さ1.5~3㎝、やや密に花が(1~)2~ 3(~ 4)個つく。花の苞は帯紫色、狭卵形、長さ5~7mm×幅2.5~3mm、無毛、まばらに縁毛があり、先は長い尖鋭形。花は逆につく。子房と花柄は紡錘形、長さ7~8mm、咢片は白色、中脈の両側に赤紫色の縦の縞をもち、1脈がある。背側の咢片は花弁とともにフード状になり、狭卵形、長さ5~6mm×幅2~2.5mm、無毛、先は鈍形。側咢片は長円状披針形、斜め、長さ8~9mm×幅2.8~3mm、基部に袋がある。花弁は白色、中脈に沿って赤紫色の縦の帯があり、線状披針形、斜め、長さ5~6mm×幅約1mm、縁毛があり、先は鋭形。唇弁は白色、Y-形、 長さ12~13mm、膜質。下唇(hypochile)は凹形、球形の袋状、長さ2~2.5mm ×幅1.5~2mm、無隔壁、2本の狭い長円形の肉質突起(calli)があり、唇弁の中央部分(mesochile)は長さ4.5~5mm、各縁に沿って長毛縁のフランジがあり、中脈の両側に赤紫色のブロッチを3~4個もつ。フランジは5~8個の細い十分間隔の開いた糸からなり、各糸は長さ1~2mm。上唇(epichile)は広がり、2裂し、切れ込みに1個の赤紫色のブロッチをもつ。裂片は互いに鋭角に広がり、倒卵形、長さ4~5mm×幅3.5~4mm、縁はわずかに波打ち、先は切形~鈍形。ずい柱(column)は長さ約1.5mm、丈夫。葯は紫赤色、狭披針形、長さ約3.5mm。嘴状体はピンク色、先は又状。柱頭の裂片は離れ、ほぼ円形。花期は6~7月。

10 Odontochilus poilanei (Gagnep.) Ormerod  ツシマラン 対馬蘭
  synonym Evrardia poilanei Gagnep.
  synonym Chamaegastrodia poilanei (Gagnep.) Seidenf. & A.N.Rao
 中国、台湾、東ヒマラヤ、チベット、ミャンマー、タイ、ベトナム原産。中国名は齿爪齿唇兰 chi zhao chi chun lan。和名は発見地の対馬厳原町に因む。日本では絶滅したと考えられている。
 背咢片は約・長さ7㎜×幅4mm。唇弁はT-形、長さ約16㎜、2本のつの状に開き、先にV-形の裂孔(lacunae)がある。上唇(epichile)の裂片は長円形、約・長さ5㎜×幅2.5㎜。

11 Odontochilus tashiroi (Maxim.) Makino ex Kuroiwa  イナバラン 稲葉蘭
  synonym Odontochilus inabae (Hayata) Hayata ex Schltr.
  synonym Odontochilus inabae (Hayata) Hayata ex T.P.Lin [Flora of China]
  synonym Anoectochilus inabai Hayata 單囊開唇蘭
  synonym Anoectochilus inabae Hayata
 日本(南西諸島)、台湾原産。中国名は台湾齿唇兰 tai wan chi chun lan。イナバラン属(Odontochilus)とされることもある。山地の林内に生える。
 独立栄養(autotrophic)植物。高さ10~20㎝。茎は斜上し、緑褐色、葉は4~5枚。葉は緑色、卵状長円形~卵形、わずかに斜め、長さ4~6㎝×幅2.5~3.5㎝、先は鋭形、基部は葉柄状で筒状の鞘は長さ1.5~3.5㎝。花序柄は緑色、赤褐色を帯び、長さ5~8㎝、有毛。花序軸は長さ2~6㎝、緩く花が3~10個つく。花の苞は淡褐色、卵状披針形~披針形、長さ8~12mm、わずかに子房より短く、外側に毛がある。花は直立し、逆にならない。子房と花柄は赤褐色又は緑色、円筒状紡錘形、捻じれず、長さ10~15mm、有毛。咢片は淡緑色、大きな暗褐色を帯びた緑色のパッチをもち、外面に毛がある。背側の咢片は花弁とともにフード状になり、卵形、長さ5~6mm×幅3.5~4mm、先は尖鋭形又は短い尖頭形。側咢片は長円形、わずかに斜め、長さ11~12mm×幅4.5~5mm、先は鋭形。花弁は淡緑色、大きな暗褐色を帯びた緑色のパッチがあり、卵状披針形、強く斜め、長さ6.5~7mm×幅2.2~3mm、先は尖鋭形尾状。唇弁は白色、Y-形、 長さ17~26mm。下唇(hypochile)は球形の袋状、長さ約3mm、無隔壁、2本の指状の肉質突起(calli)があり、唇弁の中央部分(mesochile)は長さ9.5~16mm×幅2~3mm、各縁に沿って長毛縁のフランジがある、ヌランジは5~8個の細い糸と浅い小円鋸歯の薄片からなり、各糸は長さ4~8mm。上唇(epichile)は縦に広がり、2裂し、裂片は広く散開し、扇形、約・長さ10mm×幅5.5mm、先は鈍形~わずかに小円鋸歯状。ずい柱(column)はわずかに捻じれ、長さ約3.5mm、2個の低い薄片の翼がある。葯は卵形。嘴状体は直立、フォーク状に2裂する。柱頭の裂片は浅く離れる。花期は5~8月。2n=28。

12 Odontochilus tsukusianus (Masam.) T.Yukawa  ツクシアリドオシラン 筑紫蟻通蘭
 日本固有種(四国の愛媛県、九州の鹿児島県)。
 アリドオシランに似るが、唇弁は萼片より短く、先が細くなりやや切形となる。

13 Odontochilus yakushimensis (Yamam.) T.Yukawa  ヤクシマヒメアリドオシラン 屋久島姫蟻通蘭
  synonym Kuhlhasseltia yakushimensis (Yamam.) Ormerod [Flora of China]
  synonym Odontochilus yakushimensis (Yamam.) T.C.Hsu 紫葉旗唇蘭
  synonym Kuhlhasseltia integra (Fukuyama) T. C. Hsu & S. W. Chung  カモメタシロラン (台湾)
  synonym Odontochilus integer (Fukuy.) T.Yukawa  カモメタシロラン 
  synonym Odontochilus integrus (Fukuy.) T.Yukawa 綠葉旗唇蘭
  synonym Anoectochilus nanlingensis L.P.Siu & K.Y.Lang 南嶺齒唇蘭
  synonym Vexillabium integrum (Fukuy.) S.S. Ying
 日本(本州の中部地方、近畿地方、九州、四国、南西諸島)、中国、台湾、フィリピン原産。中国名は旗唇兰 qi chun lan。森、岩の割れ目、小川沿いに生える。ハクウンラン属(Vexillabium)に分類されることもある。ハクウンランに似るが、葉が暗緑色でやや長く、先が尖る。
 高さ8~15㎝。根茎は分枝し、毛がある。茎は斜上し、緑色。葉は茎の基部にほぼロゼットになるか又は茎に沿って間隔を開けてつき、緑色、赤紫色を帯び、卵形、長さ0.8~5㎝×幅0.6~2.5㎝、肉質、3脈があり、基部は円形、縁はときに小さい歯があり、先は鋭形。基部は葉柄状、長さ5~15㎜。花序はしばしば紫赤色になり、長さ4~8㎝、白色の毛があり、ピンク赤色の、不稔の苞が1~3個ある。花序軸は帯ピンク色、長さ1.5~4.5㎝、花が2~7個つき、まばらに毛がある。く花の苞は紫赤色、広披針形、長さ5~6mm、外面にまばらに毛があり、縁毛があり、先は尖鋭形。花は小さい。子房はわずかに曲がり、円筒状紡錘形、花柄を含めて長さ7~8㎜、無毛~有毛。咢片は基部が緑色、先に向かって白ピンク色になる。背側の咢片は基部で側咢片と合着し、直立、長円状卵形、凹面形、長さ3.5~4.5㎜、1脈があり、先は鈍形。側咢片は長円形、かま形、長さ5~6mm×幅約2mm、1脈があり、先は鈍形。花弁は卵形、かま形、長さ4~5mm×幅1.5~2.5mm、先は鈍形短突起状。唇弁は白色、長さ約8mm。下唇(hypochile)は袋状、2個の付属体を含む。唇弁の中央部分(mesochile)は2個の歯状のフランジをもつ。上唇(epichile)は2裂片が散開し、長さ3~4mm×幅4.5~5mm。ずい柱(column)は長さ2~3mm。葯は心形、長さ約1.4mm、先は尖鋭形。花粉塊(pollinia)は倒卵形、三角形の粘着体(viscidium)につく。嘴状体は直立、かま形に2裂し、裂片は大きさが異なる。花期は8~9月。2n=26。

参考

1) Flora of China
 Odontochilus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=122672
2) Plants of the World Online | Kew Science
 Odontochilus
http://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:30130-1