アオカモジグサ 青髢草

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Flora of Mikawa

イネ科 Poaceae エゾムギ属

別 名 ケカモジグサ
中国名 纤毛披碱草 xian mao pi jian cao
学 名 Elymus ciliaris (Trin.) Tzvelev
  synonym Elymus racemifer (Steud.) Tzvel.
  synonym Elymus ciliaris (Trin.) Tzvel. var. ciliaris

  synonym Elymus ciliaris (Trin.) Tzvel.var. minus (Miq.) Ohwi

  synonym Agropyron ciliare (Trin.) Franch. var. minus (Miq.) Ohwi

  synonym Agropyron ciliare auct. non (Trin.) Franch.
アオカモジグサの花序
アオカモジグサの小穂
アオカモジグサの苞頴
アオカモジグサの護頴と内頴
アオカモジグサ
アオカモジグサ葉
アオカモジグサとカモジグサの内頴比較
花 期 5~7月
高 さ 30~90㎝
生活型 多年草
生育場所 草地、道端
分 布 在来種 日本全土 
撮 影 蒲郡市  07.6.16
日本産のアオカモジグサは多年草。高さ30~90㎝。全体に緑色~粉白緑色。茎は直立する。葉舌は切形、長さ1.0~1.4㎜、縁が短い不規則な重小歯状、微繊毛はない。葉鞘は毛が密生する。葉は長さ15~25㎝×幅4~8㎜、表面がざらつく。花序は穂状、長さ10~20㎝、粉白色を帯びる。小穂は白緑色、長さ10~15㎜、4~7個の小花をもつ。第1苞穎と第2苞穎はほぼ同長の6~7.5㎜。護頴(外花頴)は長さ7.5~9㎜、長い剛毛が散生し、芒は長さ15~20㎜、緑色。内穎は長さ6~6.5㎜、護頴の長さより内頴(内花頴)の長さが短く、先はほぼ切形~切形~凹形。果実は長さ4~5㎜×幅1.3~1.5㎜、褐色、光沢は無い。2n=28。花期は5~7月。
 類似のカモジグサは護頴が無毛で、護頴の長さと内頴の長さがほぼ同じであり、小花を内頴側からみると芒しか見えない。
 タチカモジグサvar. japonensisは護頴背面に毛がないものであるが境界がはっきりしない。
 Elymus ciliaris (Trin.) Tzvelev var. submuticus (Honda) S.L.Chen をアオカモジグサとする見解がある。中国名は短芒纤毛草(duan mang xian mao cao)といい、芒が長さ1~3(7)㎜であり、日本のアオカモジグサとは異なる。
 YListではアオカモジグサの学名をElymus racemifer (Steud.) Tzvelev var. racemiferとしているが、Kewscience、World Flora Online、GBIFではElymus racemifer (Steud.) TzvelevはElymus ciliaris (Trin.) Tzvelevのsynonymとしている。Elymus ciliaris (Trin.) Tzvelevはケカモジグサであり、アオカモジグサはケカモジグサに含められる。ケカモジグサは日本産ではないものにつけられた名であるため、和名はアオカモジグサとした。

エゾムギ属

  family Poaceae - genus Elymus

 多年草、普通、株立(房状)、普通は根茎がなく、まれに根茎がる。稈は普通、直立する。 茎葉の葉鞘はほぼ基部まで分裂する。葉耳は有または無。葉身は平らまたは巻く。 穂状花序は直立~うなずく。小穂は各節に1または2(~4)個つき、無柄、まれに常に短い小花柄があり、花序軸に圧着し、明瞭に側部が扁平、」、普通、すべての小穂が等長で似ており、2~10個またはそれ以上の小花をもち、花軸は粗い。苞穎(glumes)は対生または隣りに並び(side-by-side)、線状披針形~披針状卵形、堅い膜質~革質、1~9(~11)の脈があり、竜骨は無く、先は鈍形~短い芒になり、脈は±隆起する。護穎(lemma)は披針状長円形、外側は丸く、5脈があり、±毛があり、先は鈍形または鋭形、まれに歯があり、脈は先で収束し、芒は直立または後屈する。内穎(palea)は護穎より短いかまたは等しく、先は小凹形またはほぼ円形、または鋭形。穎果は普通、護穎と内穎に密着する。x=7。属名のElymusはギリシャ語のelyo='巻く'に由来し、穀粒が内外の果頴に固く抱かれていることによる。
 世界に約170種あり、両半球の温帯地域に分布し、主にアジアに分布する。

エゾムギ属の主な種と園芸品種

1 Elymus caninus (L.) L. イブキカモジグサ 伊吹髢草
 中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア、ヨーロッパ原産。中国名は犬草 quan cao。別名はイブキカモジ。日本では伊吹山だけに見られ、安土桃山時代に帰化したとされる。林内、林内の空き地、くぼ地(scrub)、山の斜面に生える。
 稈はゆるく株立(房状)になり、高さ80~150㎝、平滑。葉鞘は。葉身は緑色または粉白色を帯びた緑色、広線形、平ら、長さ2~20㎝×幅0.5~1.1㎝、薄く、無毛または上面がザラつきまたは直軟毛が散在する。穂状花序はうなずき、やや密、長さ10~20㎝。小穂は各節ごとに1個つき、緑色、まれに緑紫色、芒を除いて長さ10~15㎜、2~5個の小花がつく。苞穎(glume)は披針形[伊吹山;広被針形 ,Flora of Pakistan;被針形~狭長円形]、上部で急に狭くなり、3~5脈があり、幅の広い二次脈があり、ザラつき、縁が薄膜質。第1苞穎(proximal glume)は長さ0.6~1㎝、芒は長さ約2㎜。第2苞穎(distal glume)は長さ0.7~1.1㎝、芒は2~4mm。護穎(lemma)は平滑[伊吹山;微毛 ,Flora of Pakistan;ときに微毛]、長さ0.9~1.1㎝、芒は散開し、長さ1.5~1.8㎝。内穎は(palea)の先は切形。 葯は長さ2.5~2.8㎝。花期および果期は6~8月。 2n=28。

2 Elymus ciliaris (Trin.) Tzvelev ケカモジグサ 毛髢草
  synonym Elymus ciliaris var. ciliaris
  synonym Roegneriaciliaris (Trinius) Nevski
  synonym Elymus racemifer (Steud.) Tzvelev アオカモジグサ
 日本(北海道、本州、四国、九州、沖縄)、韓国、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は纤毛披碱草 xian mao pi jian cao。山の斜面、湿った草地、道端に生える。
 多年草。稈は単生または叢生し、直立するか、または膝状に曲がり斜上し、長さ30~100cm、直径1.5~3.5㎜、3~4節がある。葉は根生葉と茎葉。葉鞘は表面が平滑、または毛がある。葉舌は縁毛の無い膜質、長さ0.3mm。葉身は長さ10~20㎝×幅3~10㎜、表面は無毛、または直軟毛がある。花序は総状花序の複合。総状花序は1個、斜上し、弧状になり、左右相称、長さ10~20㎝×幅8~10㎜。花序軸は平らになり、縁はザラつく。小穂は花序軸の幅広側に詰まる。花序軸の節間は線形、長さ10~25㎜、花序軸の節間の先端は平らになる。小穂は単生。稔性の小穂は無柄、4~10個の稔性の小花からなる。先端の小花は無くなる。小穂は楕円形~長円形、側部が扁平、長さ10~22㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下の関節で離れる。小軸(rhachilla)の節間は長さ1~1.5㎜、毛がある。苞穎は宿存し、等長、小穂より短い。第1苞穎は披針形、長さ5~8㎜、第2苞穎の長さの0.7~0.9倍、革質、竜骨は無く、5~7脈があり、先は片側に歯をもち、または歯状に1~2裂し、鋭形または尖鋭形。第2苞穎は披針形、長さ7~9㎜、革質、竜骨は無く、5~7脈があり、先は片側の歯をもち、または歯状に2裂し、鋭形又は尖鋭形。稔性の護穎(fertile lemma)は長円形、長さ7~10㎜、革質、5脈があり、護穎の側脈はうねがあり、表面は無毛、または毛があり、縁は縁毛があり、先は歯状、1~2裂し、鋭形、1本の芒がある。主要な護穎(principal lemma)の芒は曲がり、全体の長さは10~30㎜。内穎(palea)は護穎の長さの0.66~0.8倍、竜骨に繊毛がある。先端の不稔の小花は未発達でも、稔性の小花に似ている。鱗被(lodicules)は2個、膜質。葯は3個。柱頭は2個。穎果は密着した果皮をもつ。(Plants of the World Online)
【Flora of Chinaの解説】
 稈は単生または叢生し(株立になり)、普通、基部で膝状に曲がり斜上し、ときに直立し、高さ40~130㎝、直径1~5㎜。 葉鞘は無毛、または基部に直軟毛がある。葉身は平らで、長さ9~25㎝×幅0.3~1㎝、無毛~ザラつき、直軟毛または毛があるか、または密に毛がある。穂状花序は直立またはうなずき、長さ10~22㎝。花序軸はザラつき、縁には剛毛がある。小穂は各節ごとに1個(または2個)つき、緑色、芒を除いて長さ10~22㎜、小花が5~12個つく。苞穎は長円状披針形または楕円状披針形、第1苞穎(proximal glume)は長さ6~11㎜、第2苞穎長さ7~13㎜、5~7脈があり、ザラつき、縁毛があり、または脈と縁に沿って白色の粗毛があり、先は鋭形、尖鋭形、または尖る。護穎は長円状披針形または長円形、ザラつき~剛毛があり、またはその両方があり、縁は短い繊毛~長い縁毛があり、先は尖るか、または芒がある。第1小花の護穎(first lemma)は長さ7~12㎜、芒はしばしば後屈し、長さ1~30㎜。内穎(palea)は長円状卵形、護穎よりもかなり短く、ザラつきまたは竜骨の上部に繊毛があり、先は切形。花期および果期は5~7月。(Flora of China)
2-1 Elymus ciliaris var. ciliaris アオカモジグサ
 日本、韓国、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は纤毛披碱草 xian mao pi jian cao。
 葉身は無毛だが、縁はザラつく。苞穎は楕円状披針形、先は尖り、普通、先端の下に歯がある。護穎は外側に剛毛があり、縁に長い縁毛がある。第1小花の護穎(first lemma)は長さ8~9㎜。芒は長さ10~30mm。内穎は竜骨の上部に繊毛がある。花期および果期は5~7月。2n=28。
 日本のアオカモジグサは中国の短芒纤毛草とはやや異なり、基本種に近い。護穎の芒が長い。多年草。高さ30~90㎝。全体に緑色~粉白緑色。茎は直立する。葉舌は切形。葉鞘は毛が密生する。葉は長さ15~25㎝×幅4~8㎜、表面がざらつく。花序は穂状、長さ10~20㎝、粉白色を帯びる。小穂は白緑色、長さ10~15㎜、4~7個の小花をもつ。第1苞穎と第2苞穎はほぼ同長の6~7.5㎜。護頴(外花頴)は長さ7.5~9㎜、長い剛毛が散生し、芒は長さ15~20㎜、緑色。内穎は長さ6~6.5㎜、護頴の長さより内頴(内花頴)の長さが短い。果実は長さ4~5㎜×幅1.3~1.5㎜、褐色、光沢は無い。2n=28。花期は5~7月。
2-2 Elymus ciliaris (Trin.) Tzvelev var. amurensis (Drobow) S.L.Chen ウスゲカモジグサ 薄毛髢草
  synonym Elymus amurensis (Drobow) Czerep.
  synonym Elymus ciliaris (Trin.) Tzvelev subsp. amurensis (Drobow) Tzvelev
  synonym Roegneria amurensis (Drobov) Nevski
 日本、韓国、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は阿麦纤毛草 a mai xian mao cao。山の斜面に生える。
 稈は直径4~5㎜。葉身は両面と縁に密に毛がある。苞穎は長円状披針形、脈と縁がザラつき、先は鋭形または尖鋭形。護穎は外側がザラつきまたは小剛毛があり、縁に短い繊毛がある。第1小花の護穎(first lemma)は長さ9~12㎜。芒は長さ20~25㎜。花期および果期は6~7月。葉舌は0.5~2㎜
2-3 Elymus ciliaris (Trin.) Tzvelev var. lasiophyllus (Kitag.) S.L.Chen アラゲカモジグサ 荒毛髢草
 中国原産。中国名は毛叶纤毛草 mao ye xian mao cao。山の斜面、湿った草地、道端に生える。
 葉身は両面に密に直軟毛がある。苞穎は楕円状披針形、脈と縁に縁毛があり、先が尖る。護穎は外側に剛毛があり、縁に長い縁毛がある。芒は長さ10~25㎜。花期および果期は5~7月。
2-4 Elymus ciliaris var. hackelianus (Honda) G. Zhu & S. L. Chen タチカモジ 立髢
  synonym Elymus racemifer (Steud.) Tzvelev var. japonensis (Honda) Osada [Ylist]
  synonym Elymus ciliaris (Trin.) Tzvelev var. japonensis (Honda) S.L.Chen
  synonym Elymus ciliaris (Trin.) Tzvelev var. hackelianus (Honda) S.L.Chen
  synonym Elymus ciliaris (Trin.) Tzvelev subsp. japonicus Á.Löve
 日本(本州、四国、九州)、朝鮮、中国に分布。中国名は日本纤毛草 ri ben xian mao cao。別名はタチカモジグサ、ウスゲカモジグサ。丘陵地に生える。
 葉身の下面は無毛、上面および縁はザラつく。苞穎は楕円状披針形、先は鋭形または尖る。護穎は外側がザラつき、縁は繊毛がある。第1小花の護穎(first lemma) は長さ8~8.5㎜。芒は長さ5~25㎜。内穎は竜骨の上部に沿ってザラつく。花期および果期は5~7月。2n=28。
2-5 Elymus ciliaris (Trin.) Tzvelev var. submuticus (Honda) S.L.Chen アオカモジグサ 青髢草 狭義
  synonym Elymus racemifer (Steud.) Tzvelev var. racemifer [Ylist]
  synonym Elymus ciliaris (Trin.) Tzvel.var. minus (Miq.) Ohwi

  synonym Agropyron ciliare (Trin.) Franch. var. minus (Miq.) Ohwi [日本イネ科植物図譜 桑原義晴]

  synonym Agropyron ciliare (Trin.) Franch. subsp. minus (Miq.) T.Koyama
  synonym Agropyron ciliare var. submuticum Honda
  synonym Agropyron racemiferum (Steud.) Koidz.
  synonym Elymus racemifer (Steud.) Tzvelev
  synonym Roegneria racemifera (Steud.) Kitag.
  synonym Agropyron ciliare var. submuticum Honda
  synonym Agropyron ciliare f. submu-ticum (Honda) Ohwi
 日本、中国に分布。中国名は短芒纤毛草 duan mang xian mao cao。山の斜面、湿った草地、道端に生える。
 葉身は普通、無毛。護穎は外側に剛毛があり、縁は長い縁毛があり、先は尖るかまたは長さ1~3(~7)㎜の芒がある。内穎(palea)は竜骨に沿って上部に繊毛がある。花期および果期は5~7月。2n=28。(Flora of China:E. ciliaris var. submuticus)
 学名はYlistではElymus racemifer (Steud.) Tzvelev var. racemiferとされ、KewscienceなどではElymus racemiferを認めず、Elymus ciliaris (Trin.) Tzvel.とされ、ケカモジグサに含められる。

【アオカモジグサを別種とする説】
2-5 Elymus racemifer (Steud.) Tzvelev var. racemifer アオカモジグサ
  synonym Roegneria racemifera (Steudel) Kitagawa
 日本のアオカモジグサは中国の短芒纤毛草とはやや異なり、護穎の芒が長い。多年草。高さ30~90㎝。全体に緑色~粉白緑色。茎は直立する。葉舌は切形。葉鞘は毛が密生する。葉は長さ15~25㎝×幅4~8㎜、表面がざらつく。花序は穂状、長さ10~20㎝、粉白色を帯びる。小穂は白緑色、長さ10~15㎜、4~7個の小花をもつ。第1苞穎と第2苞穎はほぼ同長の6~7.5㎜。護頴(外花頴)は長さ7.5~9㎜、長い剛毛が散生し、芒は長さ15~20㎜、緑色。内穎は長さ6~6.5㎜、護頴の長さより内頴(内花頴)の長さが短い。果実は長さ4~5㎜×幅1.3~1.5㎜、褐色、光沢は無い。2n=28。花期は5~7月。
 アオカモジグサをRoegneria racemifera(Elymus racemifer)とする説(参考9)では次のように分類し、ケカモジグサ Roegneria ciliaris(Elymus ciliaris)とは別種としている。葉舌と内穎の違いが図で示されている。葉舌はアオカモジグサでは長さ1.0~1.4㎜、縁が短い不規則な重小歯状、微繊毛はない。ケカモジグサでは葉舌が長さ1㎜以下、縁に微繊毛がある。内穎はアオカモジグサでは先がほぼ切形~切形~凹形。ケカモジグサでは先が普通、円い。
 Key to Spesiese

A. 葉舌は長さ1.0~1.4㎜、膜質、帯褐色または赤褐色で、環状、先が切形、縁が短い不規則な重小歯状、綿毛状の繊毛(lanuginoso-ciliolatae)は無い。苞穎は狭く、先は鋭く尖り、ときに、芒がある。護穎はほとんど無毛、外面と脈の上にやや直軟毛があり、内面は小剛毛に覆われるかまたは無毛。内穎は先がほぼ切形~切形~凹形。

..... アオカモジグサ , タチカモジグサ ,コカモジグサ Roegneria racemifera

B. 稈と穂状花序が太い。葉身は幅10㎜以下。鞘はのどまで外側に絨毛がある。芒は長さ15~20㎜以下、まれに無芒。

C. 稈は毛があり、とくに節に絨毛がある。
................メカモジグサ Roegneria racemifera f. mitis

CC.稈の下部と鞘は絨毛状直軟毛がある。
................ケアオカモジグサ R.racemifera f. Okuyamae

BB. 稈と穂状花序は細い。葉身は幅6mm以下。葉鞘は無毛。芒は長さ3~10㎜以下。
................ホソバチチカモジグサ R. racemifera var. Hackeliana

AA. 葉舌は無~長さ1㎜(通常は長さ0.5㎜)以下、膜質、上面の下部は厚く、淡黄色で、ごく暗色になり、環状、先は切形、縁には細かい綿毛状の繊毛がある。苞穎は幅が広く、先は鋭形。護穎は広く、 上から脈までおよび上面に密に直軟毛があり、下面は剛毛があり、縁の上部に直軟毛の縁毛がある。内穎は通常、先が円く、まれに狭く切れ込み~凹形になる。
......................ケカモジグサ ナツノチャヒキグサ R. ciliaris

B. 葉身はざらつくだけ。

C. 稈は無毛。
.......................R. ciliaris f. ciliaris

CC. 稈は上部に開出する粗毛がある。
.....................ジクゲカモジグサ R. ciliaris f. eriocaulis

BB. 葉身は両面と縁に粗毛が密にある。
.....................アラゲカモジグサ R. ciliaris f. lasiophylla

AAA. 葉舌は長さ0.5~2㎜、膜質、暗褐色、環状、縁は切形、不規則な単純な小歯状で、綿毛状の繊毛は無い。葉鞘は堅い薄膜質、両面に常に、密に粗毛がある。護穎はほぼ縁に小剛毛状の縁毛があり、残りは細かくザラつく。内穎は先が常に、円い。
....................ウスゲカモジグサ R. amurensis


3 Elymus dahuricus Turcz. ex Griseb. ハマムギ 浜麦 広義
 日本(北海道、本州、四国、九州)、韓国、中国、モンゴル、ロシア、ブータン、インド、カザフスタン、キルギスタン、ネパール、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア原産。中国名は披碱草 pi jian cao。海岸、林内の空き地、くぼ地(scrub)、山の斜面、谷、草地、礫地、ときに道端や畑の縁に生える。
 稈は直立または基部で膝状に曲がり、高さ40~140㎝、2~4節がある。葉鞘は無毛たは基部に密に直軟毛がある。葉身は±粉白色、平ら、まれに巻き、長さ5~25㎝×幅0.5~1(~1.2)㎝、下面は平滑、上面は平滑またはザらつく。穂状花序は直立し、やや密、長さ14~18㎝×幅0.5~1㎝、花序軸の縁には繊毛がある。小穂は緑色または紫緑色で、普通、熟すとわら色になり、各節ごとに(1~)2個つき、長さ9~15㎜、2~5個の小花をもつ。苞穎は披針形または線状披針形、長さ7~10㎜、3~5脈があり、脈がザラつきまたはザラつく小剛毛があり、先は尖鋭形または長さ5㎜以下の芒がある。護穎は披針形、微軟毛または毛、あるいは密に小剛毛が全体にある。第1小花の護穎(first lemma)は長さ7~9 mm。芒は真っすぐまたは反曲し、長さ2~20mm。内穎は護穎と同長、竜骨に沿って縁毛があり、竜骨の間に±毛があり、先は狭い切形。花期および果期は6~8月。
3-1 Elymus dahuricus Turcz. ex Griseb. var. dahuricus ハマムギ 浜麦 狭義
  synonym Elymus woroschilowii Ptobat.
  synonym Elymus excelsus Turcz. ex Griseb.
  synonym Elymus dahuricus Turcz. ex Griseb. subsp. excelsus (Turcz. ex Griseb.) Tzvelev
  synonym Clinelymus excelsus (Turcz. ex Griseb.) Nevski
  synonym Clinelymus dahuricus (Turcz. ex Griseb.) Nevski
 日本、韓国、中国、モンゴル、ロシア、ブータン、インド、カザフスタン、キルギスタン、ネパール、トルクメニスタン、ウズベキスタン、南西アジア原産。中国名は披碱草 pi jian cao。別名はオオハマムギ。海岸、林内の空き地、くぼ地(scrub)、山の斜面、谷、草地、礫地、ときに道端や畑の縁に生える。
 稈はより丈夫で、高さ80~140cm。葉鞘は無毛。苞穎は脈がザラつく。第1小花の護穎(first lemma)は長さ9㎜。芒は長さ10~20㎜。花期および果期は6~8月
3-2 Elymus dahuricus Turcz. ex Griseb. var. cylindricus Franch. コハマムギ 小浜麦
  synonym Elymus franchetii Kitag.
  synonym Clinelymus cylindricus (Franch.) Honda
 中国原産。中国名は圆柱披碱草 yuan zhu pi jian cao。山の斜面、道端に生える。
 Kewscience、GBIFではこの変種を認めていない。
 稈は細く、高さ40~80cm。葉鞘は無毛。苞穎は脈がザラつく。第1小花の護穎(first lemma)は長さ7~8 mm。芒は長さ6~13mm。 花期および果期は夏下旬。2n=42。
3-3 Elymus dahuricus Turcz. ex Griseb. var. villosulus (Ohwi) Ohwi ヤマムギ 山麦
  synonym Elymus villosulus Ohwi
  synonym Elymus osensis Ohwi
  synonym Elymus dahuricus Turcz. ex Griseb. subsp. villosulus (Ohwi) A.Löve
 北海道、本州中部以北、南千島に分布する。別名はオゼムギ。草原や林縁などに生える。
 Kewscience、GBIFではこの変種を認めていない。
 葉の表面に短毛がまばらにある。

4 Elymus formosanus (Honda) Á.Löve タイワンカモジグサ 
  synonym Elymus formosanus (Honda) Á.Löve var. pubigerus (Keng) S.L.Chen
 台湾原産。中国名は台湾披碱草 tai wan pi jian cao。

5 Elymus glaucus Buckley
 北アメリカ(カナダ、USA,メキシコ)原産。英名はblue wild rye , blue wildrye
品種) 'Blue Basin'

6 Elymus gmelinii (Ledeb.) Tzvelev イヌカモジグサ 犬髢草 広義
  synonym Elymus gmelinii var. tenuisetus (Ohwi) Osada
  synonym Elymus gmelinii subsp. tenuisetus (Ohwi) Á.Löve
 日本(長野県の高地)、韓国、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン原産。中国名は真穗披碱草 zhen sui pi jian cao。林縁、山の斜面、草原、道端に生える。
 稈はゆるく株立し、細く、高さ60~100cm、基部で直径1.5~3mm。葉鞘は平滑、無毛、基部に下向きの毛がある。葉身は平らまたは内巻きし、長さ9~20(~26)cm×幅0.2~0.8cm、下面は無毛、上面はザラつきまたは微軟毛がある。穂状花序は直立またはうなずき、普通、偏側生(secund)、長さ9~15cm。小穂は各節ごとに1個つき、黄緑色または紫色を帯び、長さ15~25㎜、(3~)5~7個の小花をもつ。苞穎は長円状披針形または披針形、ほぼ等長、長さ10~15㎜または第1苞穎は長さ6~11㎜、第苞穎は長さ9~12㎜、5~7脈があり、脈に沿ってザラつき、先は鋭形または尖鋭形。 護穎は披針形、全体に小剛毛がある。第1小花の護穎(first lemma) は長さ10~12㎜、芒は散開し、長さ2.5~4.5cm。内穎は護穎と同長またはほぼ同長、竜骨に剛毛があり、先はほぼ鈍形または凹形。葯は長さ2.5~3.5㎜。花期および果期は6~8月。
6-1 Elymus gmelinii (Ledeb.) Tzvelev var. gmelinii コウアンカモジグサ 
 日本、韓国、中国、モンゴル、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン原産。中国名は真穗披碱草 zhen sui pi jian cao。森林の縁、山の斜面、道端に生える。
 Flora of ChinaではElymus gmelinii var. tenuisetusをsynonymとしている。
 稈は高さ60~80㎝、基部で直径1.5~2㎜。苞穎は不等長。第1苞穎(proximal glume)は長さ6~11㎜、第2苞穎(distal glume)は長さ9~12㎜。護穎の芒は長さ2~4cm。花期および果期は6~7月。2n=28。
6-2 Elymus gmelinii var. macratherus (Ohwi) S. L. Chen & G. Zhu
 中国原産。中国名は大芒披碱草 da mang pi jian cao。山の斜面、道端に生える。
 稈は高さ75~100㎝、基部で直径約3㎜。苞穎はほぼ等長、長さ10~15㎜。護穎の芒は長さ3~4.5cm。花期および果期は7~8月。
6-3 Elymus gmelinii (Ledeb.) Tzvelev var. tenuisetus (Ohwi) Osada イヌカモジグサ 
  synonym Elymus gmelinii (Ledeb.) Tzvelev subsp. tenuisetus (Ohwi) A.Löve
 北海道、本州中部(長野県霧ヶ峰周辺)、南千島、朝鮮に分布。山地に生える。全体に小形で小穂がより小さく,芒が細い点で区別される  多年草、高さ80~100㎝。茎はやや叢生し、平滑、無毛、光沢がある。葉は線形、長さ10~20㎝×幅5~8㎜、基部は狭くなり、先は漸尖し、縁と両面はザラつき、表面に短い伏毛がまばらにある。葉舌は長さ1.5~2㎜、淡褐色、質が厚く、先は切形。葉鞘は平滑、無毛。穂状花序は直立し、長さ10~17㎝。小穂は花序軸の各節に単生し、花序軸に圧着してつき、線状紡錘形、長さ16~20㎜、普通、小花を5個もつ。小花の基部に基毛がある。苞穎は2個がほぼ同形、同大、長さ約8㎜、5~9脈があり、先は短い芒状に尖る。護穎は長さ9~10㎜、厚く、5脈があり、脈上部に短剛毛があり、先に長さ25~35㎜の芒がある。

7 Elymus humidorum (Ohwi & Sakam.) Á.Löve ミズタカモジグサ 
  synonym Elymus humidus (Ohwi et Sakam.) A.Löve ミズタカモジグサ 
 日本(本州、九州)、朝鮮原産。別名はミズタカモジ。水田周囲に生える。カモジグサからは内穎の上半部に翼がないこと、タチカモジやアオカモジからは内穎は護穎と同長であることで区別できる。花茎が太くて直立し、芒は帯紫色、穂はばらけない。
 多年草、叢生し、緩く株立する。根茎は短い。稈は膝状に曲がり、斜上し、長さ40~90㎝×直径2~3㎜、4~7節がある。葉は根生葉と茎葉。葉鞘は外縁が無毛。葉舌は縁毛がなく、膜質、長さ0.5~0.7㎜、先は切形。葉身は長さ10~25㎝×幅3~8㎜、堅く、表面はザラつき、上面は粗く、または両側が粗い。花序は総状花序からなる。総状花序は1個、単生、左右相称、長さ8~20㎝×幅7~10㎜。花序軸は平らになる。小穂は花序軸の広い側に詰められる。花序軸の節間は線形、長さ7~15mm、節間の先端は平ら。小穂は単生。稔性の小穂は無柄、4~10個の稔性の小花からなり、先端の小花が削減され、小穂は楕円形~長円形、側部が扁平、長さ13~22㎜×幅5~6㎜、熟すと別れ、それぞれの稔性の小花の下の関節で離れる。小軸(Rhachilla)の節間は長さ1~2㎜、毛がある。小花のカルスは毛がある。苞穎は宿存し、等長、小穂より短い。第1苞穎(lower glume)は披針形、長さ5.5~7㎜、第2苞穎(upper glume)の長さの0.75~0.8倍、革質、竜骨は無く、3~5脈があり、先は鋭形。第2苞穎(upper glume)は披針形、長さ7~8.5㎜、革質、竜骨は無く、 5~7脈があり、先は鋭形。稔性の護穎(fertile lemma)は長円形、長さ8~11㎜、革質、縁はかなり薄く、5脈がある。護穎の側脈はうねがあり、縁に毛があり、下部に毛があり、先は鋭形、1本の芒がある。主な護穎(principal lemma)の芒は全体で長さ12~30㎜。内穎(palea)は長円形、護穎の長さと同長、竜骨は狭い翼があり、縁毛がある。先端の不稔の小花は未発達であるが、稔性の小花に似ている。鱗被(lodicules)は2個、膜質。葯は3個。柱頭は2個。子房は先に毛がある。穎果は密着性の果皮があり、長円形、長さ5~6㎜、先に毛がある。花期は春(5月)。2n=42(6倍体)。

8 Elymus lanceolatus (Scribn. & J.G.Sm.) Gould
 ロシア、北アメリカ原産。英名thickspike wheatgrass , streamside wheatgrass。
品種) 'Bannock' , 'Critana' , 'Schwendimar' , 'Sodar'

9 Elymus magellanicus (É.Desv.) Á.Löve
  synonym Elymus glaucescens Seberg
 南アメリカ南部原産。英名はMagellan wheatgrass , wheat grass
品種) 'Blue Tango'

10 Elymus nakaii (Kitag.) S.L.Chen ハクトウカモジグサ 
 朝鮮、中国原産。中国名は吉林披碱草 ji lin pi jian cao。

11 Elymus nipponicus Jaaska エゾカモジグサ 蝦夷髢草
  synonym Elymus koryoensis Honda
  synonym Elymus yezoensis (Honda) Osada var. koryoensis (Honda) Osada
  synonym Agropyron tashiroi Ohwi タイシャクカモジ(広島県北東部の帝釈峡)
  synonym Elymus pendulinus (Nevski) Tzvelev var. yezoensis (Honda) Tzvelev エゾカモジグサ 
  synonym Elymus yezoensis (Honda) Osada, nom. illeg.
  synonym Elymus yezoensis (Honda) Osada
  synonym Agropyron yezoense, HONDA sp. nov.(1929)エゾカモジグサ
  synonym Agropyron koryoense Honda(1932)コウリョウカモジグサ
  synonym Elymus pendulinus var. yezoensis (Honda) Tzvelev
  synonym Elymus kurilensis Prob.
 北海道、本州中部地方、朝鮮、千島列島、サハリンに分布。別名はコウリョウカモジグサ、タイシャクカモジ。
 多年草、叢生しする。稈は細く、長さ60~100㎝。葉鞘は表面が無毛。葉舌は縁毛がなく、膜質、長さ0.4~0.7mm、切形。葉身は長さ10~25㎝×幅3~5mm。花序は総状花序からなる。総状花序は1個、単生、斜上し、弧状になり、左右相称、長さ10~18㎝。花序軸は平らになり、小穂は花序軸の幅広側に詰められ、花序軸の節間は線形、節間の先端は平ら。小穂は扁平、単生する。稔性の小穂は無柄で、5~7個の稔性の小花からなり、先端の小花は無い。小穂は楕円形、側部が扁平、長さ15~20㎜、熟すと別れ、各稔性の小花の下の関節で離れる。小軸(rhachilla)の節間は、無毛、またはまばらに毛がある。苞穎は宿存し、等長、小穂より短い。第1苞穎(lower glume)は披針形、長さ6~7㎜、第2苞穎(upper glume)の長さの0.8~0.9倍、革質、竜骨はなく、5脈があり、表面には直軟毛があり、先は尖鋭形。第2苞穎(upper glume)は、長さ4㎜、革質、竜骨はなく、7脈があり、表面には直軟毛があり、先は尖鋭形。稔性の護穎は長円形、長さ7~9㎜、革質、 5脈があり、側脈はうねがあり、表面は剛毛があり、先は鋭形、1本の芒がある。主な護衛(principal lemma)の芒は全体で長さ10~25㎜。内穎(palea)は護穎の長さと同長、竜骨に縁毛があり、表面に微軟毛があり、背には毛がある。先端の不稔の小花は未発達でも稔性の小花に似ている。鱗被(lodicules)は2個、膜質。葯は3個、長さ2~2.5㎜。柱頭は2個。穎果は密着性の果皮がある。2n=28。
【Agropyron yezoense(1929)エゾカモジグサの解説】
 根はひげ根。稈は直立し、高さ60 cm、無毛。葉鞘は節間で短く、無毛、節は平滑。葉舌は短い。葉は線形、狭く、わずかに尖鋭形、長さ10~15㎝×幅3~5㎜、乾くと平ら、巻かず、下面はザラつき、上面は毛がある。穂状花序はややうなずき、直立し、細長く、長さ10~18cm。小穂は披針形、長さ15㎜、緑色、4~5小花がつく。苞穎は不毛(barren)、わずかに不等長、披針形、剛毛状尖鋭形で尖り、毛があり、第1苞穎は長さ7~7.5㎜、5脈がある。第2苞穎は長さ8~9㎜、7脈があり、明瞭でザラつく。稔性の護衛は、ほぼ革質、披針形、長さ8㎜、5脈があり、縁に縁毛があり、背に剛毛があり、先は長い芒があり、芒は長さ10~20㎜、細く、ザラつき、ほぼ直立。内穎は淡く、長く、披針形、先が鈍状凹形、2竜骨があり、竜骨に縁毛があり、背に微軟毛がある。葯は長さ2mm以上あり、黄色、線形。子房は毛がある。

12 Elymus pendulinus (Nevski) Tzvelev マンシュウカモジグサ 満州髢草
 朝鮮、中国、モンゴル、ロシア原産。中国名は缘毛披碱草 yuan mao pi jian cao。林内、山の斜面、谷、草地、川沿いに生える。
 稈の高さ60~110㎝、全体が無毛または節に微軟毛か毛があり、ときに、上部に密に下向きの毛もある(葉鞘から突き出る)。葉鞘は無毛、または少なくとも基部に下向きの毛がある。葉身は平らで、長さ10~25㎝×幅0.3~0.9㎝、無毛、ザラつきまたは上面に直軟毛がある。穂状花序はわずかにうなずき、長さ12~25㎝。小穂は各節ごとに1個つき、緑色または基部が紫色を帯び、芒を除いて長さ15~25㎜、小花は4~9個つく。苞穎は披針形または長円状披針形、3~7脈があり、ときに脈がザラつき、縁はときに緩く繊毛があり、先は鋭形または尖る。第1苞穎(proximal glume)は長さ7~9㎜。第2苞穎(distal glume)は長さ7~10mm。護穎は披針形または長円状披針形、外側はザラつき、上部に直軟毛があり、先近くに緩く小剛毛があり、または全体的に小剛毛があり、縁は上部に縁毛がある。第1小花の護穎(first lemma)は長さ8~11㎜。芒は直立またはわずかに後屈し、細く、長さ15~30㎜。内穎は護衛よりわずかに短いかまたはほぼ同長、竜コツの上部に繊毛があり、竜骨の間に毛がある。葯は長さ約2㎜。花期および果期は5~7月。2n=28。

13 Elymus repens (L.) Gould シバムギ 
 ユーラシア、北アフリカに広く分布。英名はquackgrass , couchgrass , chiendent 。別名はヒメカモジグサ。日本(北海道、本州)に帰化している雑草。
 多年草。強い根茎性で、ときに粉白色になる。稈は高さ50~100㎝。葉はとき、やや基部に密集する。葉鞘は直軟毛がありまたは下部では無毛。葉耳は三日月形、長さ0.3~1㎜。葉舌は0.25~1.5㎜。葉身は幅6~10㎜、普通、平ら、下面は無毛またはまばらに直軟毛があり、上面は普通、脈上にまばらに直軟毛があり、ときに無毛、脈は平滑、間隔が広く、一次脈が目立ち、二次脈によって分離される。穂状花序は長さ5~15㎝×幅0.5~1.5㎝、直立し、普通、各節に1個の小穂があり、たまに少数の節に2個の小穂がつき、節間は長さ4~6(9.5)㎜×幅0.5~1.2㎜、平滑またはザラつき、無毛、均一に微軟毛があるかまたはまばらに直軟毛があり、毛は長さ0.3㎜以下。小穂は長さ10~27㎜、伏せまたは斜上し、4~7個の小花をもち、苞穎の上、各小花の下で間接が離れる。苞穎は長円形、無毛、上部に竜骨があり、竜骨は下部では不明瞭で平滑、上部ではザラつき、目立ち、側脈は不明瞭、上部の1/2に透明な縁があり、先は鋭形、芒は無または有で、芒は長さ3mm以下。第1苞穎(lower glumes)は長さ8.8~11.4㎜、3~6脈がある。第2苞穎(upper glumes)は長さ7~12㎜、5~7脈がある。護穎は長さ8~12㎜、無毛、ほとんど平滑、ときに上部が細かくザラつき、芒は無くまたは長さ0.2~4(10)㎜の芒があり、芒は真っ直ぐ。内穎(paleas)は長さ7~9.5㎜、竜骨は1/2からほぼ全長まで繊毛があり、先は凹形または切形、あるいは円形。葯は長さ4~7㎜。2n=22, 42。
13-1 Elymus repens (L.) Gould f. aristatus (Schumach.) Stace ノゲシバムギ 
  synonym Elymus repens (L.) Gould var. aristatus (Schreb. ex Baumg.) Melderis et D.C.McClint.
 別名はノギナガヒメカモジグサ。芒があるもの。

14 Elymus sibiricus L. エゾムギ 蝦夷麦
  synonym Clinelymus sibiricus (L.) Nevski
 日本(北海道、本州、四国、九州)、朝鮮、中国、モンゴル、ロシア、アジア中部~東部、ヨーロッパ北部~東部、アラスカ、カナダ、USA原産。中国名は老芒麦 lao mang mai。英名はSiberian wild rye。海岸の砂地、林内の空き地、くぼ地、谷の砂地、礫地に生える。
 稈は普通、直立し、ときに基部でわずかに傾伏し、高さ60~90㎝。 葉鞘は無毛。葉身は平らで、長さ10~15㎝×幅0.5~1㎝、無毛または上面にわずかに毛がある。穂状花序は垂れ下がり、緩く、長さ15~20㎝、花序軸の縁はザラつき、繊毛がある。小穂は粉白を帯びまたは紫色を帯びた粉白色、普通、各節に2個、小花は(3~)4~5個つく。苞穎は狭披針形、長さ4~5㎜、3~5脈があり、無毛、脈がザラつき、先は尖鋭形または長さ約4㎜の芒がある。護穎は披針形、5脈があり、基部では不明瞭、ザラつくかまたは微軟毛がある。第1小花の護穎(first lemma)は長さ8~11㎜、芒は長さ15~20㎜。内穎(palea)は長さが護穎に等しく、りゅこつに繊毛があり、竜骨の間に微軟毛がある。花期および果期は6~8月。2n=28, 42。

15 Elymus tsukushiensis Honda  カモジグサ 髢草 広義
  synonym Elymus kamoji (Ohwi) S. L. Chen
 日本、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は柯孟披碱草 ke meng pi jian cao。林縁、山の斜面、道端に生える。
 稈は、緩く株立(房状)になり、直立または膝状に曲がり、高さ(30~)50~100㎝。葉鞘は普通、無毛、縁は普通、縁毛がある。葉舌は長さ約0.5㎜、先は切形。。葉身は平らまたは内巻きし、長さ5~40㎝×幅(0.1~)0.3~13㎝、無毛、ザラつく。穂状花序はうなずき、まれに直立し、長さ(2.5~)7~20㎝、花序の節間は長さ8~16(~25)㎜。小穂は各節に1個つき、緑色または紫緑色、芒を除いて長さ(10~)13~25㎜、 小花が(3~)5~8個つく。小軸(rachilla)は微軟毛があり、節間は長さ(1.5~)2~2.5㎜。苞穎(glumes)は卵状披針形~長円状披針形、3~5(~7)脈があり、縁は広く薄膜質、先の芒は長さ2~7㎜、まれに鋭形で芒がない。下側の苞穎(proximal glume)は長さ4~8㎜。上側の苞穎(distal glume)は長さ5~9㎜。護穎(lemma)は披針形、無毛~小剛毛があり、縁は膜質。第1小花の護穎(first lemma)は長さ8~11㎜。カルスは微軟毛~小剛毛があり、芒は直立またはわずかに後屈し、長さ18~40㎜。内穎(palea)は護穎よりわずかに短いかまたは等しく、縁に明瞭な翼があり、先はほぼ円形または鈍形。花期および果期は5~7月。
 Kewscienceでは変種を認めず、まとめている。
15-1 Elymus tsukushiensis Honda var. transiens (Hack.) Osada カモジグサ 髢草
  synonym Elymus kamoji (Ohwi) S.L.Chen [Flora of China]
 日本(北海道、本州、四国、九州、沖縄)、朝鮮、中国原産。
15-2 Elymus tsukushiensis Honda var. tsukushiensis オニカモジグサ 
 日本、朝鮮、中国、ロシア原産。中国名は柯孟披碱草 ke meng pi jian cao。別名はオニカモジ。
 稈は高さ50~100cm。小穂は長さ13~25㎜、小花が5~8個つく。苞穎は先に普通、芒がある。2n=42(6倍体)

16 Elymus violaceus (Hornem.) J.Feilberg
  synonym Elymus sierrae Gould
 ロシア、北アメリカ原産。英名はSlender Wheatgrass , Arctic wheatgrass , Élyme latiglume。
 多年草、叢生し、根茎は無い。稈は高さ18~75㎝、しばしば傾伏し、または膝状に曲がり、節は普通、無毛。葉鞘は無毛、葉耳は長さ約0.5mm。葉舌は長さ0.5~1㎜、先は切形。葉身は幅3~4㎜、平ら、無毛または毛があり、下面は、上面よりも毛が密でなく、毛が短く、先は鋭形。穂状花序は長さ5~12㎝、芒を除いて幅0.4~0.7㎝、直立し、各節に1個の小穂をつけ、節間は4~5.5㎜、縁に縁毛がある。小穂は長さ11~19mm、扁平、(3)4~5の小花をもち、小軸は毛があり、長さ約0.4㎜、苞穎の上、各小花の下で関節が離れる。苞穎は長さ8~12㎜×幅1.2~2㎜、隣接する護穎の長さの約3/4~1倍、狭卵形~倒卵形、しばしば紫色を帯び、無毛、ときにザラつき、平らまたは均等に全長にわたって竜骨があり、竜骨およびその他の脈は普通、平滑、ときにザラつき、3(5)脈があり、内面は無毛、縁は普通、不均等で、幅広い縁は幅0.3~1㎜、普通、上部の1/3で最も広く、先は鋭形~円形、しばしば芒があり、芒は長さ2㎜以下。護衛は無毛または毛があり、毛は普通、しなやかな、すべて似ており、普通、先に芒があり、芒は長さ0.5~3㎜、真っすぐ。内穎は護穎とほぼ等長、先に向かって先細り、先端は幅約0.4㎜。葯は長さ0.7~1.3㎜。2n=28。
品種) 'Adanac' , 'AEC Hillcrest' , 'First Strike' , 'Primar' , 'Pryor' , 'Revenue' , 'San Luis'

17 Elymus yubaridakensis (Honda) Ohwi タカネエゾムギ 高嶺蝦夷麦
 KewscienceではElymus sibiricus L.のsynonymとしている。
 日本固有種(夕張岳)。北海道の夕張山系に分布する。高山の蛇紋岩地に生える。
 花序は先がうなずく。小穂は長い芒があり、無毛。苞穎は長さ7~8mm。芒は2.5~3cm。2n=28。

18 ハイブリッド
(1) Elymus x mayebaranus (Honda) S.L.Chen オオタチカモジ 
  synonym Roegneria x mayebarana (Honda) Ohwi
 別名はタリホノオオタチカモジ。
 ミズタカモジとカモジグサの雑種、花序は上部が下垂し、不稔。
(2) Elymus x nakashimae (Ohwi) Yonek. ザラゲカモジ 


参考

1) Flora of China
 Elymus
http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=111513
2) Plants of the World Online| Kewscience
 Elymus
http://www.plantsoftheworldonline.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:60452048-2
3) World Flora Online
 Elymus
http://www.worldfloraonline.org/taxon/wfo-4000013270
4) World Checklist of Vascular Plants
 Elymus
https://wcvp.science.kew.org/
4) Flora of North America
 Elymus
http://beta.floranorthamerica.org/Elymus
5) 植物研究雑誌 Jpn. Bot. 95(3): 167–170 (2020)
 新田紀敏,佐藤 謙:イヌカモジグサ(イネ科)北海道に産す
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB95-3_167-170_abstract.pdf
6) 北海道産被子植物の分類学的研究
 中井秀樹 著 2000年 例1.エゾカモジグサ.499–419
https://tohoku.repo.nii.ac.jp › ...PDF
7) 日本産カモジグサ類 (Elymus)の分類と分布について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/weed1962/46/Supplement/46_Supplement_138/_pdf/-char/ja
8) 植物学雑誌/43 巻 (1929) 510 号 p291-294
 Nuntia ad Floram Japoniae III.
 Agropyron yezoense, HONDA sp. nov.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jplantres1887/43/510/43_510_291/_pdf/-char/ja
9) 植物学雑誌 Journ. Jap. Bot. Vol.42 No.7 p219(1967)
 北川政夫*. ケカモジグサ近縁種の再検
http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_042_219_223.pdf